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Part 3: The Ninth Autumn

Chapter 3.11: Garnet East’s Onslaught

Scene 3.11.1:

“あぁ, いつも以上に機嫌が悪そうだな…”

Sapphire WestのVice-Leader Falconは, FAS (Flag Attacker Squad) の一員として, M2-point (Middle-lineとsecond-lineの交点) についたLeader Keikoの右後方に控えて, 自らのボスの精神状態を心配した. 

ここしばらくずっと, 意図的に避けられているのではないかと思えるほど, Akioと名乗るEquipmentのinspectorがSapphire側の担当につかず, この大事な最終戦でもついに彼はこちらには来なかった.  そのハズレの連続にさすがにKeikoの心もへこんでいるのか, 試合が始まる前に一言二言, 雑談を交わしても良さそうなloungeで, 彼女は機嫌が悪いというより, 何か物思いにふけているような表情を見せていた. 

そのためFalconは意を決し, 左前方3メートルほどにいるKeikoに大きな声で呼びかけて駆け寄り, “Keikoさんには, 絶対, Donさんを倒してほしいんで, 今日は自分を好きなように使ってください.  自分はボロボロになりますから.”と頼んでみた. 

それを聞いたKeikoは少しだけ笑みをこぼし, “ありがと.  とことん使ったるわ.”と言って親指を立て, Falconも同様に応じた.  そしていつもであればこういうシーンでは白い歯を見せて笑みを見せるKeikoだが, 今日は少し口元をほころばしただけですぐに無表情な顔に戻った. 

顔に感情が表れていないというのは, その人の心中を読めないゆえに不気味であり, 恐怖心を生じさせる.  しかしFalconは, 自分のボスであるKeikoとの数年間の付き合い上, 今日は悲壮な執念を秘めているように思えた. 

“Keikoさん, みんなも今日は特別な日だと思ってます.  Teamとしてはもちろんchampionを狙わないといけませんけど, ‘Four Star Spearの承継者’がついに‘Apex Fighter’となる.  それは我々の願いでもあります.  みんな黙っていますが, それこそが今日の目標です.  Captainだって, きっとそう思っているに違いないです…”

Scene 3.11.2:

11月4日.  Hanasakaを襲撃しようとする敵対勢力との暗闘が続いている中, “Autumn Kassen Games, 9 E.E.”もいよいよ最終試合を迎えた.

試合開始時間の13時半まであと数分.  下り坂の天気予報どおり, 灰色の雲の塊が徐々に増えている空の下, northern-endは常勝のGarnet East, southern-endは負けず劣らずの実力を持つSapphire Westが布陣していた. 

First roundとsecond roundの合計勝ち数は, Garnet Eastはsecond roundではまだ勝ち星がなく3のままで, 獲得したDefense AreaはOuter moatの外縁の“Area-L”, “Area-3”, “Area-I”であった.  一方, Sapphire Westも同じく勝ち数3で, そのうちsecond roundで1勝しているので, Defense Areaは“Area-C”, “Area-9”に加えてOuter Defense Zoneの“Western-section”を取得していた. 

補足: Defense Areaの取り方について(1) First roundでは城の外縁の8つのAreaからしか選べず, それらすべてがどこかのclubに選択されれば, Outer Defense Zoneの4つのsectionのいずれかを選べるようになる.

また, 前日の3日にAutumn Gamesの全試合を終了したTopaz Southも同じく勝ち数3で, Defense Areaは“Area-M”, “Area-6”に加えてOuter Defense Zoneの“Southern-section”を取り, 同じく全試合終了済みのEmerald Northはsecond roundで勝ち星を2つ取り, “Area-12”とOuter Defense Zoneの“Northern-section”を押さえていた. 

残る空白のDefense AreaはOuter Defense Zoneの“Eastern-section”のみで, GarnetかSapphireか勝ったほうがそこを得ることになるが, それと同時に勝ったほうが勝ち数が最も多くなってこのAutumn Gamesのchampionとなり, さらにMain Keep Areaも獲得することになる. 

Main Keep Areaの警備権は, 最終試合の後におこなわれる閉会式でKasgaからchampionship pennantという形で直接授与される予定であったが, 今回は敵襲を警戒してKasgaは閉会式にはヴァーチャルな立体映像として現れて祝辞を述べるに留まり, pennantも後日, 渡されることになっていた. 

KassenをDefense Areaの争奪戦として再定義した目的は, 何もFighterたちの功名心を満たすためだけではなかった. 

獲得したAreaではclubが店を出して観光客向けにちょっとしたオリジナル・グッズを販売したり, いつものトレーニングを兼ねた仲間どうしでの模擬バトルを見せたりすることもできる.  そのためこの場所取りは経済的欲求を満たすためでもあった.  そして押さえたAreaは自らのAlliance clubにも使わせることができるので, その経済的効果はすべてのAlliance clubにも波及することになった. 

そうなると最も取りたいのはやはり名実ともに満足できる, Main Keep Areaであろう.  今は焼失しているが城の象徴であるCastle Keepがあるうえ, Palaceもあるので多くの観光客が集まってくるのは間違いなく, ここが最も効果を期待できる. 

補足: Defense Areaの取り方について(2) 人流を考えると, 外縁からOuter Moatを渡ってOuter Defense Zoneに入る橋があるArea-L, Area-I, Area-C, Area-Mと, あるいはそこからInner Moatを渡ってMain Keep Areaに入る橋があるSouthern-sectionとNorthern-sectionも経済的に魅力的なエリアであった. 

もっとも, 試合の順番や勝敗によって, 取りたいところを思いどおりに取れるわけではなく, またclubごとにどこを押さえたいか趣向が異なるため, 獲得したDefense Areaは, 閉会式から10日間に限り, clubの間で交換したり切り売りしたりすることもできるようにしていた.

こうした陣取りゲームで, 経済的な効果など全く関心がなく, ただ単にMain Keep Areaを取れるかどうか, それしか興味がない者もいる.  DonやKeikoのような精神的な価値に重きを置くFighterだ.  そこはchampionでないと取れず, だからこそ価値があると考える, 根っからの勝負師である. 

また, そうした勝負にこだわるFighterは“Apex Fighter”にも人一倍執着するが, そのApex Fighterの発表と, その者に対するKasgaの“Diamond Sword”の授与は, Fighter戦績評価システムによって今回のArena gamesの全試合を通して戦いぶりを分析された後, 11月9日の敵襲を片付けてからおこなわれることになった. 

Scene 3.11.3:

Garnet EastのCaptain Donは, Hanasaka CityにおけるKassenの歴史が始まって以来, 毎年春秋, すべてのseason gamesに出場している数少ないベテランFighterであり, 今年で34歳になる.  年齢による体力の衰えはさほど見られず, 20代の若いFighterが多い中でもまだまだ現役として働けたし, これまでの積み重ねてきた経験もあることから, 後進の育成にも熱心で, 多くのFighterから親しまれていた. 

そして多くの人々が現役のFighterの中では, Donがずっと“Apex Fighter”だろうと考えていたし, Keikoのほうが強いのではないかと考える人がちらほら出だしたのはここ1年ほどのことであった.  現にそのKeikoも, 現時点ではなおDonが最強だと考えていて, 彼を倒す, すなわちSingles Matchで彼に勝つか, Team Matchの最中におこなうduelで自らの手で彼を戦闘不能にすることを最大の目標にしてきた. 

彼自身は, 自分は“Apex”だとおごることはなかったが, 周りからそう言われ続けていることを自覚し, その評価に合った自分でありたいと努力を怠ることはしなかった.  そして昨今, Keikoのほうが最強なのではないかと言われても, 全く不快には感じなかった.  Apex Fighterであり続けてきたがゆえに, teamの垣根を越えてすべてのFighterたちのリーダーとしてKassen community全体の今後の発展を考え, 自分を越えていく人材を育てる義務を自覚していたからだ. 

その誇り高いDonが試合の3日前に, Keikoを最強のFighterだとこの春の引退会見で評価したTopaz SouthのAbilioの自宅を訪れ, Keikoについて語り合った.

Season gamesの実施期間中は, Fighterたちは他のteamのFighterたちと交流することは原則禁じられ, そうしたFighterに何か言いたいことがあれば, 自分のclubと相手方のclubのスタッフを介して伝えるよう求められていた.  Fighterどうしが内通して八百長試合をすることを防ぐためとも言われていたが, season games中にfieldの外で他のteamのFighterとの間で個人的な余計な紛争を生じさせないためでもあった. 

しかし, 引退したFighterと話をすることは妨げられていなかったため, Donは, 仲の良い, 療養中のAbilioを見舞いに訪れ, 最終戦のSapphireとの試合における立ち振る舞いについて助言を求めたのであった. 

“実はこの試合を最後に, 引退できればと思ってる.”

“引退?  Donさんも?”

Abilioは, 病室を訪れたDonの唐突な表明に驚いた.  そして, “おれと違って, 元気なのに?”と付け加えた. 

“まあ, Kassenも来年で10年目を迎える.  いつまでも古い人間が居座っていると, 優秀な後輩が活躍できないからな.”

そんな月並みな理由にだまされるわけがないだろうと言いたげなAbilioは鼻で軽く笑って, “ほかにも理由があるんだろう?”と突っ込みを入れた. 

“そうだな…  最強のFighterと言っていいだろうというやつがようやく現れたからかな.”

それはKeikoのことを指しているのは明らかだが, どうしてDonがそういうことを言いたくなったのかを探るべく, “最強クラスが2人いたらまずいのか?”と, Abilioが尋ねた. 

“それは構わんけど, おれはその時がFighter生活の区切りをつける時だと考えていた.”

ようやく本音が垣間見えたと思ったAbilioは, “なるほど.”と言ってうなずいた後, “Donさんなりの, Kageroさんに対するけじめみたいなものか…”と, いきなり核心を突いた. 

“さすが, Abilio.  そのとおりだ.”

一から十まで説明する必要がないばかりか, 一から二までを説明しただけで自分の本心を理解してくれる友がいてくれることに, Donはありがたいことだと感じざるを得なかった. 

“Kageroには本当に申し訳ないことをしてしまったと思っている.  あの事故の後, おれは, こんな罪悪感を抱えたままでは戦えないと思って, 責任を取ってFighterをやめようと真剣に考えたこともあったけど, Kageroにそのことを言ったら, そんなことをされたら自分がみじめになるからやめてくれと, あいつに頼まれたんだ.”

“Kageroさんらしい.  彼としては, Donさんが最強の存在であり続けてくれれば, 不慮の事故で突然引退したとはいえ, 自分は最強をかけて戦った者だという矜持を持てるからな.”

AbilioはKageroの気持ちを推し量ったうえで, “そうであれば, Kageroのためにもそう急いで引退すべきじゃないんじゃないの?”と, Donに問うた. 

“いや, Kageroは, おれを気遣って言ったんだと思うけど, あいつは, 自分にはSapphireのFour Star Spearを継いだ妹がいるから, 絶望して打ちひしがれているわけではないとも言ったんだ.  でもその時におれは思ったんだ.  そうであれば, Kageroが自分の思いを託した妹が, おれを倒してApex Fighterの座を奪い取った時が来るまでは, おれはFighterをやめてはいけないんだと.  逆に言えば, その時が引きぎわだろうと.”

Donの深慮に感銘したAbilioは, “さすが, Donさん…  そうであれば, 今度の試合, 思いっ切り真剣勝負で行くんだろう?”と, 心意気を聞いた. 

“もちろん.  負けてやるつもりはこれっぽっちもない.  もしKageroの妹がおれを倒せなかったら, 引退は延期せざるを得んな.”

そう言ってDonは腰に手を当てて豪快に笑った. 

Scene 3.11.4:

Garnet Eastは, “灼熱の太陽のFighter”をイメージして, Outfits一式の基調色を朱色とし, TorsoとArm-guardはザクロの実のような暗い赤色, いわゆるガーネット色をメタリックにした色で塗り, 橙色の太いひもを組み通したものを着けていた. 

Helmetは, 基調色の朱色であり, Ranked Fighterが付けているcrestは, 形は様々だが金色で統一されていた.  Captain Donのcrestは, 2つの炎が翼を広げるように立っている形をしていた. 

両teamともFighterたちのフォーメーションとしては, このAutumn Gamesですっかり定着した“4 squad分業制”, すなわち, FAS (Flag Attacker Squad), FDS (Flag Defender Squad), near-sideのBPS (Block Pusher Squad), far-sideのBPSの4つに分かれる体制を採っていた. 

Donは, Captainの定位置であるFDSの中央, Flagのすぐ前でmech-horseに乗り, 自陣の各所に指示を出していた. 

Sapphire West側のFASのLeader Keikoは, やはり彼女のベスト・ポジションである“M2-point” (Middle-lineとsecond-lineの交点) につき, やや後方の両脇にVice-LeaderのFalconとMakenaを従えて, northern-endのGarnetのFighterたちを眺めていた. 

Keikoは, もちろんこの試合で, Donを, Team Matchの中でduelが生じれば自らの手で彼を倒し, なおかつSingles Matchでも彼から勝ちをもぎ取ろうと意気込んでいた. 

今回, second-halfのSingles Matchでは, GarnetからはCaptain Don, SapphireからはLeader Keikoが出ることを両clubが事前に通告し, Autumn Gamesの最後の見せ場作りをしてていた.  それゆえどちらもそれを前提にして試合運びを考えていた. 

“Kasgaさんは優しいからウチのこと, 心配してくれるけど, でもウチは, Kasgaさんが, この人ならきっと助けてくれる, きっと守ってくれるって思える, 誰よりも頼れる人になりたい.  Kasgaさんの命を狙う‘クソワルモン’なんかにウチが負けるわけないってKasgaさんに思ってもらうには, この試合でDonさんを倒して, まずは最強のFighterとしてみんなに認めてもらうことが最低条件.  それができんかったら, Kasgaさんは, 自分を守ってくれるのはウチやと思えへん.  ウチは, Kasgaさんを守りたい.”

自然とこぶしを握り締め, mech-horseの上で威嚇の表情を見せるKeikoを, Garnet側のnear-sideのBPSの中で, 目を輝かせて見ている者がいた. 

“いやぁ, fieldで実際に見ると, 本当にかっこいいなぁ.”

細身で180センチを超える背丈があり, いつも笑顔を絶やさない人懐こい彼の名前はAres.  後にKeikoから最高のライバルと評され, 彼女と何度も名勝負を見せることになる彼は, この時は, この春にGarnetに入団したばかりの新人であった. 

とはいえ彼はすでに注目されたFighterだった.  高校を卒業した後, Keikoと同様, Alliance clubで2年間修業していたのだが, Topaz Southと提携関係にあるWakayama CastleのWakayama Oceansに所属していたものの, Topazにはそのまま移籍せず, 一旦, 退団してフリーになり, Chammeiと同様, Keikoと戦いたいためSapphire Westには入らず, Fighterの育成に定評がある, DonがいるGarnet Eastに入りたいと思って門戸をたたいたのであった. 

そしてGarnetとしても, AresがAlliance clubに所属していた時に十分な戦果を上げ, 新人だった時のKeikoを彷彿させると評されるほど, その実力を期待されていたため, 大歓迎であった. 

“まずは, Keikoさんにたどり着けるかどうか…”

Aresはspearを構えながら, どうやってKeikoと対決しようかと考えていた.  試合前の練習中に彼はCaptain Donに, Keikoと対決するにあたって何か要点を教えてほしいと助言を求めた.  しかしそれに対してDonは, “そんなことで悩んでいるのか.  心配するな.  おまえが一撃でやられる.”と答えて, ワハハと大きな声で明るく笑っただけであった. 

“絶対やられるとしても, 一突きぐらいは入れたいな…”

電光掲示板のカウントが0になり, ピーッ!と笛の音がArena中に響き渡った瞬間, Aresも, “やーっ!”と, 声を張り上げて前に走り出した.  Southern-endのSapphireのFighterたちもspearを突き出して走ってきて, Aresがいるnear-sideでもBlockの押し合いが早速始まった. 

通常, まだ試合経験が浅いFighterたちは, とにかくBlockを押し続けるpusherになる場合が多いが, Aresは志願して, pusherを狙ってくる相手を迎撃するdefenderとなっていた.  さらに彼は, 防御に専念するつもりは最初からなく, 隙を見て深く攻め入るつもりでいた. 

前方に配置されるSpear Fighterたちは, 相手方のFASの前線やBPSのpusherを崩すために, 怖気づかずに相手に体当たりする消耗品のように扱われる.  そうした中で出世するためには, Ranked Fighterたちの指示に従ってひたすら戦いつつ, HPをゼロにされないように生き延び, 自分の存在をアピールすることが必要となる. 

それはかつてのKeikoも同じであり, “Sapphire Shark”の妹という要素は全く考慮されず, 優れたspearの操作術と燃える闘争心で競争を勝ち抜いてRanked Fighterになり, さらにはFASのLeaderまで, わずか5年の戦歴の中で一気に昇ってきたのである. 

とはいえ, Spear Fighterどうしが衝突する場面では, 勇み足で前に出るのは危険である.  Spearは突くだけでなく, 相手の頭や体を上から叩くためにもよく使われるので, うかつに出ると痛い目に遭うのだ.  しばらくはspear-headをガチガチぶつけながら, 間合いを縮められた相手を素早く突いて叩いて1人ずつ倒し, 敵の前線を崩していくしかない. 

ところがSapphireはなかなか隙を見せなかった. 

“こいつら守りに入ってるな.”

Donは, 相手方の戦い方を後方にて冷静に見ていた.  試合開始時にはFASの先頭にいたはずのKeikoは, 周りのFighterたちを自分より前に行かせて, いつの間にかsquadの後方で指揮をとっていた.  序盤ではあまり無理をせずに戦いながら, 相手方の戦陣のほころびが生じるのを待っているようだった. 

その待ったかいあってGarnet側がついにそのほころびを見せた.  Sapphire側がGarnet側の攻撃に押されながらじりじりと後退していたことにより, 前方で攻め立てていた塊と後方で守っていた塊との間に広い空間ができてしまったのだ. 

Sapphireはそれを見て, 後方に控えていたKeikoが2人のBow Fighterを従えてnear-sideにmech-horseで走り出し, 双方がBlockの押し合いをしている箇所よりさらにside-line側に迂回して, northern-endに空いたポケットに入り込もうとした. 

これに対してすぐさま, Garnetのnear-sideのBPSがKeikoたち3騎からなる, にわかに作られた突撃隊を迎え撃とうとした. 

“Keikoさんのほうから近づいて来てくれた.”

AresがKeikoに一突き入れるチャンスが転がってきた.  AresはKeikoの進路を予想し, 彼女たちがcenter-lineを越えてnorthern-endに入ってこようとしたとき, その進路を妨害するように, 単身飛び出した.  これは反則行為ではないが, 本人のみならずmech-horseに乗っているほうとしても危険である. 

“どけ!  邪魔や!”

Keikoが大声でどなると, Aresは反射的に道を開けてしまい, Keikoたちは走り去ってしまった.  Aresは恥ずかしくなって思わず頭をかいた. 

“へへっ.  一撃どころか一喝でやられたか.”

Donは, Keikoたちの突撃はおとりだと考えた.  彼らを迎え撃つためにFDSをnear-sideに振り向けると, Sapphireはすぐさまfar-sideから別の突撃隊をfar-sideの外側からFlagを目がけて一気に襲ってくるだろうと読んだ.  おそらくそちらのほうこそ本命なのだ. 

“ちっ!  動かんか…”

Keikoは舌打ちした.  Donはそう簡単に引っかかってくれない.  Keikoは, 自分たちの突撃に対してGarnetのFDSがほとんど動かず戦力が拡散されていないのを見て, そのままfar-sideのほうに弧を描くように走って, 再び自陣に戻っていき, center-line辺りでぶつかり合っている自らのsquadに合流した.  Keikoは基本的にがむしゃらにゴリ押しするタイプではなく, この日も落ち着いていた. 

Scene 3.11.5:

First-halfの最初のTeam Match (T1) では, 両脇のBlockをしっかり前に押し, 少なくとも相手方から自陣に押し込まれないよう踏ん張ることが大事だとCaptain Soaから指示されていたため, KeikoのFASとしては, GarnetのFASがSapphire側のBPSに横からちょっかいを出さないよう, 自らのほうに注意を引き付けようとひたすら正面からプレッシャーを与え続けた. 

しかしGarnetは勝率の高い集団であり, そのFASは頑強だった.  彼らはそう簡単に崩れはせず, このまま守りに徹することもできたが, そうはしなかった. 

FASのLeaderは, Harimouという名の身長2メートルを超える大男で, 乗っているmech-horseが犬に見えてしまうぐらいだった.  彼もKeikoと同様, この試合ではFASの中でやや後方に控えて様子を見ていたが, T1の開始から8分を経過したところで前に出て来て, “Leader Keikoに集中攻撃!”と, 仲間に大声で指示を出し, 膠着している戦況を変えようと仕掛けてきた. 

その掛け声に真っ先に反応してSapphireのFASに積極的に突っ込んできたのは, GarnetのFASのVice-Leaderである, BuayaとSazaだった.  これに対してSapphire側もFalconやMakenaを含めFASのメンバーの大半が, そうはさせまいとKeikoの前方を固めた. 

しかし, Harimou, Buaya, Sazaの3人は, Topaz Southの“Three Lightning Spears”ほどのきれいな連係プレイをするわけではなかったが, いずれも力強くspearを突き, 叩き, そしてゴリ押しが半端ない, spearの名手であった.  Sazaは, Keikoよりやや身長が高い女性のSpear Fighterだが, 力は彼女のほうが段違いにあった. 

そのため, このAutumn GamesでKeikoが力押ししたプレイを見せるようになったことで, 彼女は“Sapphire Beast”のほかに, “SapphireのSaza”とも呼ばれた.  それぐらい彼女の名前は, 力の強い女性の代名詞だった. 

そのため, Keikoの前を守るFighterたちの消耗は激しく, HPをゼロにされる者が次々と出た. 

たまりかねたKeikoは, mech-horseの後ろに飛び下り, “前を開けろ!”と, 味方に命令しつつ, 右手にspearを持ち, 左手でmech-horseの尻を押さえながら, それを盾にして前に押し出した. 

両陣がぶつかり合う最前線に出たその先には, mech-horseに乗ったBuayaの左側面が見えた. 

彼のspear-headが届かないギリギリの距離まで進み出たKeikoは, 左に顔を向けた彼と一瞬, 目を合わせたが, 次の瞬間, Keikoはその盾にしていた自分のmech-horseの背に跳び移り, そこを足場に, さらに思いっ切り空中高くにジャンプした.  そして器用にも, 自分が着地した時にBuayaの背を前に見れるように計算して体をひねり, なんとBuayaの体を左手でつかみながら彼のmech-horseに下りた. 

これはKeikoがEmeraldのChammeiとの戦いで見せた戦法と同じである.  彼女は, この体勢で背後からBuayaを左腕で抱えながら, 右手に持っていたspearを捨ててdaggerをscabbardから抜いて, Buayaの“Front Torso”に連続で突っついて, 一気に倒してしまおうとした. 

しかしChammeiと違ってBuayaはKeikoの左腕の外側から自分の腕でぎゅっと絞めて胴を左右に振ってその遠心力で, Keikoをその背から放し, 放れたと感じた瞬間にその左腕の締め上げを解放し, Keikoはmech-horseの左後方に放り出された. 

ところがその時, Buayaの左側面から, FalconがKeikoと同じやり方でKeikoのmech-horseを踏み台として使ってBuayaが乗っているそれに飛び移り, Buayaを再び背後から抱えた.  FalconはKeikoのような体操選手並みの身体能力はなかったが, Buayaが先にKeikoの攻撃を受けて動きを止めていたため, 彼女の芸当をまねすることに成功した. 

それを見たKeikoはすぐに体勢を戻し, 地面に落ちていた自分のspearを拾い, Buayaの左のArm-guardをspearで突いた.  そしてさらに前に回り込み, 彼の左前45度の角度からFront Torsoを突いた.  Falconも, 振り落とされないようBuayaの体に自分の体を密着させ, daggerで彼のFront Torsoを連続で叩き, HPをゼロにした. 

フウッと深く息を吐いたKeikoは, 次の瞬間, いつの間にか接近していたSazaに, mech-horseの上からTorsoの背面に強烈なspearの突きを入れられ, その勢いで前に倒れた. 

突かれた瞬間, 肺が口から飛び出しそうなぐらいの衝撃で息が止まったKeikoは, 咳き込みながら立ち上がり, Sazaに, “勝負されよ.”と, duelを申し込んだ. 

Sazaもそのつもりだったのか素直に応じ, mech-horseから下りた.  彼女もmech-horseに乗りながらの戦闘より地面に足を付けて戦う方が好きだったのだ. 

“Leader Keiko.  いつでもかかってきなさい.”

Sazaがけしかけたが, Keikoは攻めに出ようとはせずに, spearを構えて相手の出方を探っていた. 

“なるほど, 時間稼ぎか.  私をできるだけ足止めさせたいんだな.  ならば遠慮なく1分で…”

自信家のSazaは, TopazのAbilioのように, 目にも止まらぬ早業でspear-headを次々とKeikoの前に押し出してきた.  Keikoは全く攻めに転ずる隙もなくかわし切れずに1分の間に, Front Torsoに2回打ち込まれて10点を失った. 

それでもKeikoはこのduelをやめようとせず, Sazaもこの勢いでKeikoを倒してしまおうと攻めまくった.  Keikoは反撃のきっかけをつかめず, さらに1分間, 相手の突きや払いをなんとかかわしながらじわじわと自陣のほうに後退していった. 

そして, Sapphireの陣であるsouthern-endのsecond-lineまで戻って来た時に, Keikoは観念して左手を前に出し, このduelは終わりにしたいと合図した.  どちらかがこの合図をした時に, duelはそこで終わり, 通常の団体での戦いに戻る必要がある. 

“しまった!  深入りしすぎた.”

Sazaは気づくのが遅すぎた.  Keikoの策に見事に引っかかり, 単身で, Sapphireの陣の奥深くまで, mech-horseを連れていない状態で誘い込まれたのである.  SapphireのFDSのFighterたちが3メートルほど先にずらりと待ち構え, 後ろを振り向けば, SapphireのFASのFighterたちにぶつかるこの場所で, duelを解消された瞬間, Sazaは, あっという間にSapphireのFighterたちに取り囲まれてHPをすべて失った. 

Keikoはわざと反撃せず, 2回のspecial deductionもSazaをさらに調子づかせるための餌だったのだ. 

そして, Sazaに最後の一撃を与えたのは, Sapphireにこの春に入った新人のSpear Fighterだった.  大喜びする彼にKeikoは親指を立てて, “よくやった.”と褒めた. 

その後しばらくして, この試合の最初のTeam Match (T1) が終了した.  結局, T1はお互いに戦力の温存を優先させながらBlock押しに専念し, 局地戦でいくつか見せ場があったぐらいだった.  そして双方とも力が拮抗し, Blockを相手陣地のfirst-lineまで押し込めずに終わってしまった. 

Scene 3.11.6:

次のShoot-off (R1) は5人のBow Fighterたちが1回ずつ交替で的にarrowを射て, 的の中心により近く射た回数の多さで勝敗を決めるため, 双方のBow Fighter全員が出場した. 

Sapphire WestのBow Fighterの注目株はKeikoのsquadに所属するBilius.  昨年入団したばかりだが, 正確なショットで観客を魅了する, これからの成長が楽しみなFighterである. 

他方のGarnet Eastには, Einanという名の古株のBow Fighterがいた.  彼は, bowの腕前はもちろんだが, swordによる近接戦闘にも秀でており, 試合の状況次第ではbowを使わず, swordとdaggerだけで戦うこともある. 

Spear FighterのKeikoも, spearを持たずにswordだけで戦うことが時々あるが, 得意とするspearやbowがなくても, すべてのFighterが共通して持つswordとdaggerを使いこなせると, 戦闘能力は格段と上がり, 臨機応変にバトルができるようになる. 

Shoot-offは結局, 双方3人が射た時点でいずれもSapphire側のショットが的の中心に近かったため, Sapphireの勝ちとなり, 1点を先取した.  Biliusはまさに的のど真ん中にarrowを撃ちこみ, それがwinning shotとなったため, Arena中から驚きの声と大きな拍手を受けた. 

Bow Fighterたちの活躍によって, Sapphireの戦意は高揚した. 

“みんな, ありがとう.  助かったわ.”

Loungeに戻ってきたBow FighterたちをKeikoもねぎらった.  しかしいつもであれば, 歯を見せて笑顔で出迎える彼女だが, 今日は少し口元を緩めてわずかな笑みを見せたにすぎなかった. 

自分たちの完璧なまでの戦果にLeaderは不服なのかとBiliusはけげんな顔をしたが, Falconが, “心配するな.  今日のKeikoさんはマジで真剣な気持ちなんだ.”とフォローした. 

言葉とは裏腹にFalconは, 何か思い詰めている感じのKeikoが心配で, “Keikoさん, 表情硬いですけど, 大丈夫ですか?”と, 彼女の気分を確認してみた. 

“あぁ, ちょっと考え事してたから…”

“どんなことですか?”

“あ, いや…, 今日, EISの人, えらい少ないんやなって.  ウチらのほう2人だけやったけど, あっちのほうも2人だけっぽいから.”

KeikoもFalconも, EIS  (Equipment Inspection Section) は6人のメンバーとマネージャー1人からなる組織であることは知っていた.  通常は, メンバーが3人ずつに分かれて各teamにつき, EISのマネージャーは普段は検査をせず, メンバーの誰かが病気などで休んだ場合は代わりを務めていた. 

ところが今日は, Sapphire側を担当するEquipmentのinspectorは2人だけだった.  そのため試合前のEquipmentの装着プロセスも, 試合中のEquipment Resetの作業もいつも以上に時間がかかっていた. 

さらにKeikoは, 今日の試合の進行過程で, Garnet側についているinspectorも2人しかいないことに気づいた.  ということは, 7人いるEISのメンバーのうち3人もいないことになり, こんなことは今までになかったことを, loungeの床に視線を落としながらFalconに話した. 

“なるほど, そう言われると向こうにも2人しかいなかったですね…  つまり…, マネージャーの女性と, いかつくて無口な感じの男性と, ちょっとぼーっとした感じの男性がいないってことですよね.”

“ぼーっと?”

うっかり命を落としかねない危険すぎる地雷を踏みかけていることに気づいたFalconは, “あぁ, いや, おとなしそうな優しい感じの人です.  すみません.”と, 速やかに訂正しお詫びした. 

“心配なんですね.”

いつもの快活さがなくうつむいたままのKeikoの気持ちをFalconが推し量ると, Keikoは, “ウチらが試合できるんは, EISの人のおかげやねんで.”と理屈を言って, 心配して何が悪いという態度を示した. 

“ええ, もちろんです.  彼らなしに試合は成り立ちませんし, いつも丁寧にサポートしてくれてる彼らに我々はもっと気遣うべきかもしれませんね.”

気遣いをしたのに文句を言われると何か言い返したくなるのが普通だが, Falconは, そこはさらりといなしたうえで, 前向きな提言っぽいことを付け足した.  これはKeikoの心を動かした. 

“ええこと言うやん.  ウチらが何かできるとしたら, いい試合をすることぐらいやと思うから…, せやから, 今日の試合は特にウチにとっては…, 大事な試合やから…  その…”

Keikoが自分の言いたいことを適切に表現できる言葉選びに苦労していると, Falconは, “大丈夫ですよ.  どこかで見てくれてますよ.”と, 優しくフォローした. 

Scene 3.11.7:

First-halfの最初のTeam Match (T1) で1点も取れず, またその後のShoot-offで負けたことで1点をリードされ, 次のTeam Match (T2) でSapphire Westにhead-start advantageを与えてしまったGarnet Eastは, 全く気にもしていなかった. 

Captain Donは, 今日の試合のみならず, Sapphire Westがfirst-halfは負けなければいいというぐらいの気持ちで, 守りに入る傾向にあることは分かっていたため, 自分たちのスコアが現時点ではゼロでも受け入れ可能な結果であり, むしろ相手が1点しか取っていないとポジティヴに考えた. 

しかしDonは, この展開に満足しているわけではなかった.  彼にとっても今日は特別の日であった.  Keikoが本気になってぶつかってきて, 自分を倒すことができれば, Apex Fighterの称号を譲り渡して引退しても良いという覚悟で臨んでいるのに, 今ひとつ熱い気持ちになれていなかったからだ. 

“今日のSapphireはぬるい.  気合いを入れて, 一歩でも前へ押し出せ.  Forced Terminationになっても構わん.”

次のTeam Match (T2) の開始に先立ち, Captain Donは, Sapphireがhead-start advantageがあるfar-sideではBlock押しに専念しつつも, それ以外では守り重視で冒険をしてこないだろうとみて, 味方のFighter全員に, 相手方をできるだけ多く戦闘不能にするよう檄を飛ばした. 

そして, Flagの守備をVice-CaptainであるEinanに任せて, なんとCaptain自身がFlagを離れて前に出て, FASの一員となって押し寄せてきたのだ. 

Donの気迫が前面に出て士気が上がったGarnetはSapphireのFASの前衛を蹴散らし, Sapphireの戦線が後退し始めた. 

“まずい.”

Keikoは, FASの塊のやや後方にいたが, 仲間が次々やられるのを看過できず, “前に出る.”と周りに伝えて, GarnetのFASの突進を自ら食い止めようと, 乗っていたmech-horseの腹を足で叩いて前進させた. 

“いかん, Keikoさんにはまだ体力を温存してもらわないと.”

焦りを見せたKeikoに対してFalconは, “おれたちが前に出ますから下がってください!”と声をかけ, 自慢の脚力で, mech-horseに乗っているKeikoよりもさらに前に走り出た. 

Kassenでは“rider”と呼ばれる, mech-horseに乗っているFighter (Squad Leader以上のRanked FighterとBow Fighter) と, “runner”と呼ばれる, 地面を走っているFighterとでは, 互いにあまり戦おうとはしない.  Weaponsを振り回す高さが違うために, そのedgeが届くリーチ内で戦おうとすれば互いに接近しないといけないからだ. 

またriderは, 敵陣に入って攻撃する際には, 背後を取られないようにmech-horseを走らせ続けるため, runnerとしては追いかけるだけで疲れる.  そのためriderはriderどうしで, runnerはrunnerどうしで戦うことが多い. 

しかし, Vice-Leaderゆえにまだmech-horseに乗れないFalconとMakenaは, それでもDonに近づいた. 

そのDonは, Sapphireの前線にぶつかって前進を阻まれていたが, その最前線を左右になめるようにmech-horseを走らせて, その背の上からspearをSapphireのFighterたちのArm-guardを目がけて叩き下ろし, 隙があればTorsoに突き刺していった. 

彼の背後からspearのリーチ内まで接近したFalconとMakenaがほぼ同時にspearをDonのTorsoに向かって突き上げ, HPを2点減らすことに成功した. 

しかしDonは次の瞬間, mech-horseの首を右方向にクイッと反転させ, 右側にいたFalconに打撃を加えようと, 右手だけでspearを持ち, ポロのスティックのように, spear-headを下に向けて大きく振り払った.  そしてそのblade部分がちょうどFalconの脇腹にほぼ水平に入り, その力は破壊的であったために, 彼は左方向に吹っ飛んで, うつ伏せになって倒れた. 

“Falcon!”

地面に腹をつけたまま動かないFalconを, battle areaを上から監視しているmech-dragonflyたちが見て, その映像をリアルタイムに共有しているmech-giraffeが笛を鳴らして試合の進行を止めた. 

“Medic!”

間近で自分の相棒を倒されたKeikoは, 急いでmech-horseから下りてFalconのもとに駆けつけ, 彼の身を案じた.  強烈な衝撃を加えられた右腰の激しい痛みを, 歯を食いしばってこらえているFalconの様子を見ると, しばらく休憩すればまたバトルに戻れるぐらいのダメージではなさそうであることは直感的に分かった. 

“すみません…  Keikoさん…”

ほとんど聞き取れないぐらいの声でFalconは自らの戦闘離脱を謝った. 

“ええんよ, 気にせんといて.  ちょっと休んでていいから…”

Keikoの顔から先ほどまでの固く冷たい表情が消え, いつもと同様, 負傷したteammateを気遣う優しさがそのまま表れていた. 

激痛に耐えながらFalconは担架でbattle areaの外に運ばれていった.  SapphireのFighterたちは明らかに動揺していた.  やはり, King of Flameは別格.  恐るべきパワー.  しかしここで怖じ気づけば敵の思うところ.  ぬるい戦いを見せてしまったがゆえの結果だと思うほかない. 

Keikoは, この重たい雰囲気を打ち消すために, “心配するな!  戦力はまだ互角!気を引き締めろ!”と, 大声で周りの味方を鼓舞した. 

もっとも, 内心は焦っていた.  試合のたびにCaptain Donに対しては強烈なパワーを実感していたが, 先ほどのFalconへの一撃は格別に思えた. 

兄のKageroより1つ上の年齢であるにもかかわらず, 今までに対戦してきた数多くのFighterたちよりも, その力強さが相変わらず違う.  しかも断然違う.  力の衰えを技量の向上でカバーし第一線で活躍している古株のFighterはたくさんいるが, Donの場合は, その力自体, 全く衰えていないばかりか, なお一層強くなっているように感じるのはなぜなのか. 

Scene 3.11.8:

“Makena.  馬はやめる.  自由に動けへんから.”

Keikoがそう考えるのは自然だった.  彼女は地に足をつけている状態でこそ, 最大限の力と技能を発揮できるので, mech-horseから下りるということは本気を出すという意思表示でもあった. 

Donは, 反則をしたわけではないが, 被救護者を出したことへの配慮から, second-lineまで戻り, umpireの笛とともに試合が再開された.  再びDonが自ら猛然と前に出てくると思いきや, 今度はFASのHarimouたちに攻めを任せた. 

“Keikoさん.  ここはまだ控えてください.”

Makenaはそう言ってKeikoより前に走り出て, FASの全員に, “前に出ろ!  Leaderを守れ!”と指示した.  Falconを倒されて闘志を燃やすKeikoとしても, 部下たちだけに戦いを任せる気はなく, 自らも敵陣に切り込もうとしたが, 周りの味方が前面を固めてそう簡単にはさせてくれなかった. 

しかしそれがゆえにKeikoの両脇に隙ができた. 

“今だ!”

Garnetの新人Fighter 2人, すなわちnear-sideのBPSにいるAresと, この試合ではfar-sideのBPSに配属されたFeiが同時に感づき, middle-line近くにいるKeiko目がけて同時にspearを突き出しながら突進してきた. 

AresとFeiは今年の春に入団した”Douki Peers”であり, 仲は良いが, お互いにあいつには負けたくないとライバル心を持っていた.  そのためか考えることも似通っていて, この試合でKeikoに一撃をくらわして名を上げたいと思っていた. 

左右両方から同時に自分に迫りくる者がいることにもちろんKeikoも気づいた.  AresもFeiもお互いに自分のほうが先にKeikoに到達したいと考えて走っていたため, Keikoから見ても, ほぼ同時に自分にspear-headが当たると予想した.  Keikoは立ち止まって, 持っていたspearのheadをやや左に向けたうえで3秒数えた. 

“3, 2, 1.”

Keikoは次の瞬間, Aresよりわずかに早く接近してきた右側にいるFeiのほうに素早くカニ走りして, spearのbutt-endのほうを彼のFront Torsoに突き当てた.  これは点数にならないが, 腹に一撃をくらったFeiがひるむや, すぐさまspearを左のほうに水平に引き返し, 左から迫ってきたAresのFront Torsoにspear-headを突いた. 

そして右足をAresの体の前に踏み込みつつ自分の体を前後くるりと反転させ, spearのheadを手前に引きbutt-endを前に出し, 今度はそれでAresのFront Torsoを叩き, 跳ね返った反動で, 反対側にいたFeiのFront Torsoにspear-headを鋭く突き出した. 

FeiとAresは, 左右同時迎撃の見事な彼女のspear-moveを決められ, 仲良くマイナス5点となった.  そして, 新米Fighterたちにいつまでも構っていられないと思ってさっさとその場を去って自らのFASの仲間たちの中に溶け込んでいったKeikoの背中を見ながら, ニヤニヤ照れ笑いした. 

“お互いやられたな, Fei.”

“あぁ, 勝てる気がしない.”

“でも, 最高の技でやられて, おれはうれしいぜ.”

“いい勉強になったよ.”

Scene 3.11.9:

前線に戻ったKeikoをはじめ, Sapphire WestのLeaderたちはいつも以上に声を張り上げて味方を奮起させ, team全体がFalconを負傷させられた仕返しをしようと荒っぽく戦った. 

しかしそれ以上にGarnet Eastは荒々しかった. 

Sapphire側はこの時, far-sideではfirst-lineを越える位置までBlockを押せていて, さらに前に押そうとしていたが, GarnetのFighterたちは押す力で勝負しようとせずに, Blockを回り込んでSapphireのpusherのHPを削ることに専念した.  特に, 先のTeam Match (T1) ではKeikoに完敗したBuayaとSazaはその悔しさを糧に, teamのために暴れまくった. 

現在進行中のTeam Match (T2) の残り時間はまだ8分もあるのに, GarnetのFighterたちが, 自分自身のHPも消耗する, 捨て身の体当たり攻撃を強め, もはやBlock押しどころではなくなってきた状況を見たSapphireのCaptain Soaは, GarnetのCaptain DonがForced TerminationでこのT2の決着をつけようとしていることに気づいた. 

“せっかくfar-sideでは有利なのに…”

Soaは, 作戦の変更を決断した.

“全員, 前進!  Forced Terminationに持ち込む.”

Soaの号令の下, Sapphire側は, Flagを放っておいて, 最後尾のラインをsecond-lineまでじわじわと上げていった.  これに対しGarnet側もすぐさま倣った.  そのため, center-lineの辺りにFighterのほとんどが密集することになり, 双方がぶつかり合う最前線では逃げ場のない激しい斬り合いになり, 双方とも次々, FighterがHPを使い果たし脱落していった. 

“2人で戦え!”

Keikoは再びmech-horseに乗り, 前線のFighterたちに指示を出した.  こうした単純なFighterの減らし合いの戦いになる場合, mech-horseを走らせながら敵陣をできるだけ細かく分断して, 複数人で1人を攻撃して各個撃破しつつ, 相手方には攻撃の的を絞らさないようにすることが大事である.  そのためこのような状況では, Sapphireでは単独行動をしないことを基本としていた. 

ところがそんなセオリーを無視してFASのLeader Harimouが, Keikoの前にいたFighterを倒したうえで単独で彼女の前に現れ, spearを突き出してきた. 

“くそっ.  残り1点しかないのに.”

Arm-guardかTorsoをあと一撃されたらHPがゼロになるという瀕死の状態で, Garnetのspearの名手に戦いを臨まれるというのは, いくらKeikoでも1分も持たないと考えられた.  しかしHarimouも残り1点だった. 

Kassenの試合では, 味方のFighterのHPはsmart gogglesでその味方の姿がAR viewに入れば表示されるが, 相手teamのFighterについては分からない. 

従って, Harimouとしても, 同じくspearの名手であるKeikoに, 死にかけの状態で挑むのはかなりリスキーである.  普通であれば自分より弱そうな相手と戦って, できるだけ長い時間, 生き残りを図ろうとする.  それゆえKeikoは, Harimouがまだ6点以上のHPを持っているのだろうと考えた. 

“こうなったらしゃぁない.”

Keikoは表情を完全に消して, いったい何点残っているのか読み取れないように演じ, Harimouにspearを突き返した.  Mech-horseに乗った2人よるspearの突き合いが始まったが, 多数のFighterたちが密集して戦っている状態であるため, duelが成立しているのかどうか傍目には分からず, ほかのFighterたちも容赦なく2人に攻撃してきた. 

そこでKeikoは, Harimouに押されている振りをして, 少しずつmech-horseを後方に引き始めた.  Sazaのときと同様, 自陣におびき寄せて取り囲んでやっつける算段である. 

しかしHarimouはそれを見抜き, 安易にKeikoに近づかなかった.  そのため, KeikoとHarimouの間には, この混雑した状態にもかかわらずぽっかり1メートルのほどの穴が生じた.  それを待っていたKeikoはさっと自分の体を前に倒して自分の顔をmech-horseの背にくっつけた. 

すると, Keikoの真後ろにいたBow FighterのBiliusが, 目の前に障害物のない空域ができたチャンスを生かしてHarimouのFront Torsoに目がけてarrowを放ち, 命中させた.  これによってHarimouは戦闘不能になった. 

そしてその1秒後,  KeikoのほうにはGarnet側から放たれた1本のarrowが彼女のTorsoの背中にコツンと当たった. 

“何?!”

そのarrowは上から落ちてきたのだ.  つまりGarnetのFighterたちの頭上を, 弾道を描いて射られたのだ.  これによってKeikoも戦闘不能になった.  仕留めたのはBow FighterのEinanだった.  戦歴が長く経験豊富なEinanは, Keikoの策をちゃんと利用して自分の仕事をやったのだ. 

結局, first-halfの2回目のTeam Match (T2) は, 開始後9分経った時点で, 先にSapphire Westの戦闘可能なFighterの数が8人を割ったため, “Forced Termination”となった.  これによりより多くのFighterが残ったGarnet Eastが“survival winner”となり2点が入った. 

しかしSapphire側がBlockをfar-sideで相手陣地のfirst-lineまで押し進めることができ, near-sideではどちらもそこまで押せなかったため, Sapphire側にも1点入り, 結局, 2対2の同点でhalf-timeを迎えた. 

T2は, お互いに力任せに相手を叩いたり突いたりする場面が多かったため, Sapphire側は, 今日の試合ではこれ以上fieldで戦うべきではないほど負傷したFighterを, この時点でFalconを含めて4人出してしまった.  そのうち3人は果敢にもCaptain Donに斬りかかり, 強力な仕返しを受けたためであった. 

規格外の力技を見せるDonに対しては, 独りで攻めるべきではないのが常識で, 4人以上で囲い込んで次から次へと攻め続けて, やっと対等な戦いができる.  今日もそのようにして戦ったつもりだったが, 並外れたDonのパワーとスピードにあえなく撃破されていったのである. 

HPをゼロにされて退場になったわけではなく, 負傷して戦えなくなったFighterの交代は随時可能であり, しかも交代したFighterは持ち点20点でbattle areaに入ることができる. しかし, どこのteamもそう多くのスペアのFighterがいるわけではなく, Sapphireとしては最大で5人までしか用意していなかった.  従って, 補欠はあと1人であり, second-halfはこれ以上むやみにDonに斬りかかるのは得策ではないと言えた. 

“ほぼDonさんのシナリオどおりにこの試合は進んでいるわね…”

SapphireのCaptain Soaは, first-halfを振り返って, 自分たちが相手方のCaptainの手のひらで踊らされていることを否めなかった. 

“まあ, 悪くないシナリオだから, 乗ってあげただけなんだけどね.  だって, 私も見たいから.  Apex Fighterの称号をかけた, Fighter Keikoの本気の熱い戦いを.”


Chapter 3.12: Sapphire West’s Counterattack

Scene 3.12.1:

“皆さん, こちらはHanasaka City Energy Control Agencyです.  現在, Hanasakaの政策立案システム‘Politis’がこれまでにない大規模な記録の改ざん攻撃を受けており, 目下, 抗戦中です.  ‘Politis’は中枢頭脳Floraに守られ非常に堅牢であり, 破壊されることはありませんが, 戦闘の継続に必要な電力をまかなうために, ただ今から市内全域で, エッセンシャルなインフラを除き, 緊急電力調整介入措置をおこないます.  皆さんにはご迷惑をおかけしますが, ご理解とご協力をお願いします.”

Half-timeに入って3分経った時に, 突然, Arenaの場内放送で電力の使用制限についての緊急通知が流れた.  市民はもちろん, そうでない人たちも, smart glassesを付けていれば, 同じ内容の通知文が否応なく割り込んで表示され, 骨伝導イヤホンを通じて音声でも伝えられた. 

そして, 2回, 同じ内容で放送が繰り返された後, Arena内の半分ぐらいの照明が自動で消灯した.  幸いその日は曇り空で, 空に向かってArenaのPetalが開かれていたため, スタンドやfieldには雲を通過したまぶしすぎない日の光が採り入れられ, 外の空気に触れている人にとってはそれほどの照度の低下は感じられなかった. 

また, Hanasakaでは, 住居や事務所など電気を使うすべての施設の使用責任者に対し1年間に使用できる電力量が決められ (その施設を複数の家族や団体が共同で使用している場合は, 使用責任者がそれらに上限をそれぞれ設定する.), 上限を越えそうなときはその施設で強制的に節電を実施することがあるため, 観客たちのうち少なくともHanasakaの住民は, Politisが攻撃されていることは驚くべき有事だが, Energy Control Agencyが強制的に電力使用量の調整をすること自体は冷静に受け止めることができた. 

しかしながら, 照明の間引き消灯ぐらいであれば良いが, Kassenの試合自体がそもそもエッセンシャルとはいえないため, Floraとそれに率いられた情報システム群が苦戦するようであれば, 試合そのものの中止を命じられるのではないかという不安が芽生えて観客たちが騒ぎ始めた. 

“皆様, Castle Officeよりお知らせいたします.  現在, Energy Control Agencyによる緊急電力調整介入措置により, Arena内の電力使用量が25%低下しておりますが, 試合の実施に必要な設備へ優先的に電力を振り向けておりますので, このまま試合を継続いたします.”

Arenaの運営や試合の実施を担当しているGAMS (Games and Arena Management Section) から試合続行のアナウンスがなされると, Arena中から安堵の歓声と拍手が上がった. 

“とはいっても, 正直, Castle Officeとしても, のんきに試合をやっている余裕はないんだろうな…  Moglaさんの話じゃ, ‘Stone Cold’がFloraのラビリンスを抜け出すのは11月9日のはずなのに, なんで今, こんな攻撃を受けてんだ?  Stone Coldとの戦いでパワーを使い続けているHanasakaのFloraを, 今がチャンスと狙っているほかの敵対的なAIがいるのか…  見栄を張って予定どおりに試合を実施するなんて, 警察もCastle Officeもどうかしてるぜ.”

1週間前から期間限定の警備員として雇われている絵描きのJascaは, Arenaの南スタンドを巡回しながら上を向くと, Petalによって視界が遮られていない, 限られた空域をだけでも2機のmech-hawkがArenaの上を飛んでいるのが見えた.  そしてさらに城のほうに目を向けるとその10倍ほどが監視飛行をしていた. 

“いや, のんきにやっているわけじゃないな…  実際に働いているみんなは一生懸命だ.  特にEIS.  Akioさんは病院で安静中.  Altanさんは詳細不明の特別任務を実施中.  Juliaさんは‘Shining Sword’の総合試験を監督中.  残りは, Resilin, Yoen, Matilda, Yugoの4人か.  かわいそうに, きついだろうな…”

今日の試合では, ResilinとMatildaはGarnet Eastを, YoenとYugoはSapphire Westを受け持ち, いずれも2人で, 担当のteamの仕事をさばかなければならないきつさに不満を述べることなく, half-timeを迎えてbattle areaからloungeのほうに戻ってきたFighterたちを待ち受けて, ひとりひとりにEquipment Resetを淡々とやっていた. 

Scene 3.12.2:

2日前, Juliaは, EISのメンバー全員に対してオンライン会議で, Akioの身に起こったことを知らせた. 

Yugoをはじめ何人かは最近のAkioは心が読めなくなっていると感じて, その理由が分からずもやもやしていたが, 悪意あるnano-machinesを注入されたとは思いもよらず, 驚きとともにその実行者に対して強い怒りを皆が共有した.  そしてさらに, いずれ自分もその注入の対象になるのではないかと不安を覚えた. 

そのためJuliaは, 当面の間, 念のために, 飲食する前には検知装置を使ってnano-machinesが混入されていないか調べるよう勧めたが, Julia自身とAltan以外は誰もそのような検知装置を持っていないことが分かったため, Castle Officeの経費でできるだけ早く買って, 皆に配布すると伝えた. 

しかしなぜAkioが狙われたのか, Resilin, Yoen, Matilda, Yugoの4人は当然ながら疑問を抱かざるを得なかった. 

Yugoは, Akioが持っているあの黒い石のせいではないかと述べたが, それに対して, Akioからその石について話を聞いたことがあるMatildaが, “Akioさんは, 自分を守ってくれる石だと警察から説明されたと言ってましたけど.”と言ってYugoの説を退け, “きっとPolinaさんと何か城に関する怪しい秘密を知っているからじゃないの?”と, 自説を述べた. 

彼女は, あの夜, Akioが自分とPolinaを天秤にかけて最終的にPolinaのほうを選択したかのように思える行動をとったことにいまだに不満を持っていたのだ. 

“それだと, Castle OfficeがAkioさんを殺そうとしたってことにならないですか?”

Resilinは, 一般市民に知られたくないHanasaka Castleの秘密があるとしたら, それを持っているのはCastle Officeだろうから, Matildaの説は, 自分が所属する組織を疑うことになるのではないかと指摘した. 

そして, “あまりこういうことは言いたくないですが, Akioさんは何かの犯罪に利用されていたとは考えられませんか?”と前置きしたうえで, “つまり, 最近の犯罪者は, 人間が無意識にやってしまうちょっとした動作をスイッチのように利用して, 全く予想不能に, しかも誰も犯罪の意思がないまま, 有害作用を発生させるようなことをすると聞いたことがあります.  それで, Akioさんは, 言葉がすぐに出てこなかったり音を繰り返してしまったりすることがあるじゃないですか.  それを利用して何か悪だくみをするやつがいるのを誰かが気づいて, そいつがそれを阻止するために, Akioさんを何もしゃべれない状態にしようとしたんじゃないですか?”と, 最近の犯罪のトレンドに基づいた推理を披露した. 

“ちょっと待ってください.  それだったらそれも, Castle OfficeかCity OfficeがAkioさんを殺そうとしたってことになりませんか?  だって, そんな卑怯な手を使うのはHanasakaに攻めてこようとしているやつらですよね.  それを阻止したいのは我々じゃないですか?”

Yoenの突っ込みにResilinは, “そうですね.”と言って, 自分の理屈のおかしさに笑った. 

“私は, その…, 非常に言いにくいのですが…, 今までずっと言えなくて隠していたんですが, その…”

“Yoenさんが遠慮するなんて珍しいわね.  言いたいことがあったら, 言っていいのよ.”

Juliaは, 言いにくそうにしているYoenの背中をさすってのどにつかえるものを吐き出させようとしているかのように, 優しく発言を促した. 

“じゃあ, 思い切って言いますけど…, AkioさんとSapphireのKeikoさんはたぶん知り合いだったんだろうと思いますが, 私, 気づいていたんです.  Akioさんはどうか分からないですが, 彼女はAkioさんのことを好きなんだって.”

Matildaは失笑し, 腹を抱えた. 

“Yoenさん.  いきなり何を言い出すの?  あのスーパースターがAkioさんを好きになるって, そんなバカみたいなこと, あるわけないでしょ.”

“わ, 私もそう思ったけど, なんでか分かんないけど, そうなのよ.  今年の春, うちのシステムがダウンした日, 私はAkioさんと一緒にSapphire側を担当したんですが, あの時, 彼女はAkioさんによく分からないことを話されたんですけど, その時の彼女は目をウルウルさせて彼の顔を見ていました.  あれは, 好きな人と話ができてうれしくてうれしくてたまらないときの目です.”

“Yoenさんも気づいていたのか…”

Yugoは, このことがEISの外に漏れたら非常にまずいことになると考え, “あの, それって…”と, 慌ててその推論を否定しようとしたが, Resilinが, “ちょっと待ってください.”と言って割り込み, “もしそれが本当だったら, それはCastle Officeにとって秘密にしたいことですよね.  それがバレないようにAkioさんを消そうとしたって言いたいんですか?  それだったら, Castle OfficeがAkioさんを殺そうとしたってことになるじゃないですか?”と, Yoenに突っ込み返して笑い出した. 

Yoenも, 今まで隠していたことを, 勇気をもってさらけ出したわりには笑いを取っただけだったことにおかしさを感じて, クスッと笑った.  Matildaはやっと笑いが止まりそうだったのに, 再び笑い出した. 

“あぁ, もう, みんないい加減にして.  そんなに自分の組織が信じられないの?  みんな, 本当にCastle Officeのスタッフなの?”

Juliaも肩をすくめて, この場の雰囲気をさらに和ませた.  そして, “まあ, 犯罪事件として警察も調べているから, 何か連絡が来たら皆さんにもお伝えするわね.”と言って,彼らの中でこの話がこれ以上盛り上がらないように暗に釘を刺した. 

“Akioさんは残念ながら11月4日の最終試合には出られそうにないけど, 回復してきているのは確かよ.  一日でも早く職場に戻ってきてほしいと思っています.  Akioさんは我々のかけがえのないメンバーです.  私の責任で, 元に戻ったAkioさんに皆さんがすぐに会えるようにします.  Kasgaさんは, 力を合わせば決して負けることはないとおっしゃいました.  だから我々もくじけずにがんばりましょう.”

4人ともJuliaの力強い約束を信じていた.  そして最終試合を翌日に控えた日に, Juliaは急用ができ, Altanも体調を崩して当日Arenaに来れなくなったという追い打ちをかけることをHarukiから言われても, ここでくじけたり, 自分たちがちゃんと仕事ができなかったりすれば, それは敵の思うつぼになってしまうと考え, へこたれてやるものかと気合いを入れていた. 

とはいえ4人とも, ふと気が抜けたときにはAkioのことを考えていた.  心の内がきれいに見えてしまう異常体質の彼に早く会いたいと思っていた. 

Matildaは, 今日を含めてここ数日間, 毎日, 胸を広く開けたトップスを着ていた.  あの日, “もう見ません”と言っていた彼が, 次に会った時に同じような表情を見せるかどうか気になって仕方なかったからだ. 

YugoももちろんAkioが早く退院して職場に戻ってきてほしいとは思っていたが, 先読みをする彼は, KeikoがAkioを思っていることにYoenが気づいていたと語ったことについてJuliaがそのままうやむやにはしないだろうと考えていた.  そのため, Akioはほかのセクションに異動し, もうEISには戻ってこないのではないかと心配し, 残念な気持ちになった.

Scene 3.12.3:

“Akioさんと一緒に, この大事な一戦をこのfieldで見たかったなぁ.”

Half-timeに入った時に実施したEquipment Resetの結果, 先のTeam Match (T2) が激しい戦いだったため, 5人のFighterのEquipmentに故障が見つかったことから, Yugoは, Yoenとともにその交換品を渡しにSapphireのloungeに来ていた. 

それぞれのFighterに渡し終わり, そこからfieldのほうに出たYugoは, あと2分ほどでT3が始まり, 多くのFighterたちがまた熱い戦いを見せてくれるbattle areaを眺めて, 思わず寂しさがにじんだため息を漏らした. 

その時, 彼は鋭い視線を背後に感じて振り返ると, loungeの入口辺りでKeikoが後ろで手を組んで立って, こちらを見つめていた.  Yugoの左に立っていたYoenも同じように感じ, Keikoのほうに顔を向けた.  Keikoは, 何かを言いたそうにしているが, 言い出していいのかためらっているようであった. 

Yugoは, KeikoのEquipmentに問題が残っていたのかと思って彼女に, “どうかされましたか?”と声をかけようとしたところで, Falconがアイシングしている右脇腹を手で押さえながら現れ, “あの, すみません.”と, 逆に話しかけられた. 

T2でCaptain Donに右の脇腹を強打され担架で運ばれた後, Arenaの医務室で診断を受けたFalconは, 鍛え抜かれた肉体のおかげか, 幸いにも骨が折れたり筋肉が断たれたりしたわけではなかった.  医師は痛み止めの処置をし, 患者に対して医務室で安静にすることを勧めたが, その患者は大事な試合だからloungeで見たいと強く希望し, 医師もそれを認めたのであった. 

Yugoが, “はい.”と返事するや, Falconは, “あ, いや, 今日は, Sapphire側もGarnet側も, EISさん, 2人だけのようで, たいへんじゃないかなと思って…”と, YugoとYoenに気遣いの言葉をやや唐突に発した. 

これに対しYoenは, 人数不足でEquipmentのinspectorとしてのサービスが行き届いていないことを遠回しに伝えているのかと思い, “申し訳ございません.  こんなことは初めてなんで, 皆さんにご迷惑をおかけしています.”と謝った. 

Falconは, 謝罪を求めていたわけでは全くなかったので慌てて, “いえいえ, 不満があるわけじゃなくて.”と, 左手を少し上げて敵意のないことを示したうえで, “ただ…, その…  EISさんの中で風邪でもはやっているのかなと思って…”と, Keikoが聞きたい情報を聞き出せないか探りを入れた. 

YugoもYoenも, 先ほどからじっとこちらを見て我々の会話を一言も漏らさずに聞こうとしているKeikoの代わりに, Falconが彼女の知りたいことを尋ねていると直感的に気づいたため, どう答えようか2人はそれぞれ一瞬ためらった.  そして, ここは先輩のYoenが答えた. 

“ご心配いただきありがとうございます.  うちのマネージャーは急用ができてしまって, それにあいにく残りの2人が体調を崩して, 今日は4人だけなんです.  2人とも, まあ, 風邪をひいた程度ですので, 大丈夫です.”

Akioは風邪とはとても言えない状態であり, Altanもどのぐらい深刻な病状なのか全く知らなかったが, Yoenは心配ないと言い切った. 

“そうですか.  お大事になさってください.”

Falconは, 病気の2人のスタッフを気遣ったうえで, さらにFighterとEquipmentのinspectorとの間で越えてはいけないラインを意識しながら, “そのおふたりが少しでも元気になれるよう, いい試合をしたいと思います.”と言って, さわやかな笑顔を見せた. 

これに対しYugoは, “ありがとうございます.  我々はみんなKassenが大好きなんで, 病気の時でもきっと試合を見ていると思います.”と, 社交辞令として返答した.  もちろん, この会話の中にKeikoが我々から聞きたかったことを感じ取れるであろうと考えての発言だった. 

Akioは, 体内に入ったnano-machinesを外部から操られないように, 病院の中の, 電磁シールドがかかった隔離病室にいて, 人工的な病原と戦っている最中であり, 試合の実況をリアルタイムで見れる状態ではない可能性のほうが高いとYugoもYoenも分かっていた. 

しかしここで真実をFalconに伝えるわけにはいかないし, それよりも彼の背後にいるKeikoから悲しみがにじみ出ている眼差しでずっと見つめられ, うそと分かっていても, そうとでも言わないといけない感覚にYugoもYoenも捕らわれていた.  凍てついたバラのトゲがまとわりついた彼女の視線を浴び続けることに耐えられなかったのだ. 

Yugoの言葉を聞いたKeikoの瞳から冷たい寂しさがフッと抜け, 若干, ほおが赤くなり, 口元が緩んで笑みを浮かべたのをYoenは見逃さなかった. 

“やっぱり彼女は, Akioさんのことを思っている…”

YugoもKeikoの表情のちょっとした変化に気づいた.  今日は緊張のせいか見せていなかった, 明るくて強くて爽快感があるいつもの彼女に戻りつつあった.  そして自分の発言がKeikoおよびSapphire側に有利に働いてしまったことを認めざるを得なかった.  しかし彼は自分に落ち度があったとは思っていなかった.  Keikoのそばで誰よりも彼女をしっかりと支えているFalconの話術が巧みだっただけである. 

Scene 3.12.4:

Half-timeが終わり, northern-endにはSapphire West, southern-endにはGarnet Eastが陣を展開していった. 

電力の使用制限についての緊急通知が流れた時は曇り空でも明るかったが, それからほんの10分程度しか経っていないのに, Arena上空の雲はその厚みを増し, 今にも雨が降りそうになっていた.  Fieldの上に立つFighterたちにとってはやや暗いと感じるものの, プレイをするのに支障はなさそうであった. 

問題は雨が降ってきたときである.  通常であればArenaのPetalが天頂に向けてせり出してfieldを完全に覆ってしまうので, Fighterたちは雨に濡れずに戦えるが, 電力の使用を制限し照明の明るさを落としている状態でPetalを閉じてしまうわけにはいかず, 雨水を浴びながら戦うことをどこまで許容するかCasstle Officeとしては悩むところであった. 

Second-halfの最初のTeam Match (T3) は, Garnet 2対Sapphire 2のスコアで開始された. 

双方とも, first-halfの2回目のTeam Match (T2) とは真逆に, Block押しに注力し, 確実に点数を取りに行こうとした.  先のT2のようにbreak-offにしても2点しか取れないが, Blockをthird-lineを越えるところまで押し出せば6点取れるので, 試合に勝ちたければ基本はBlock押しが大事である. 

特にこのT3で相手より3点以上の差をつけることができれば, 次のSingles Match (R2) やその後のTeam Match (T4) で相手方に心理的に優位に立てる.  つまり, もし3点の差があれば, Singles Matchで相手に負けたとしても2点差でT4を開始でき, またその負けによってfar-sideでhead-start advantageを取られることにより, Blockをfirst-lineまで押されることは覚悟するとしても, そこまでで持ちこたえれば1点を取られるだけで済み, 1点差で逃げ切れる, という算段が立つからだ. 

そのためSapphireのKeiko-squadもGarnetのHarimou-squadも, FAS (Flag Attacker Squad)であるのに, Flag Triggered ResetやFlag Triggered Advanceを積極的に狙いに行かず, 両sideのBPS (Block Pusher Squad) を守ることを優先し, BPSの全員がBlock押しに集中できるよう敵をなぎ払うことに努めた. 

双方のFASがそうした動きを見せたことで, FDS (Flag Defender Squad) も, 相手方のFASが自陣のFlagを目がけて果敢に襲ってくる可能性は低いと見て, 自らが守るべきFlagから離れて少しずつ前方に進出した. 

そしてKassenの試合では珍しく, 双方のCaptainが“central area” (Center-lineを挟んで一方のfirst-lineから他方のfirst-lineまでの28メートルの幅) までmech-horseを進めた. 

この時, 双方のFASやFDSが両sideのBPSを支援しようと左右に戦力を分けていたため, 自陣のFlag standからそのまままっすぐmech-horseを歩ませてきた両teamのCaptainが, それぞれの陣の“M1-point” (Middle-lineとfirst-lineの交点) で, 前を遮るFighterが数人しかいない状態で対面するという異例なことが起きた. 

“これは何かの罠か?”

マリンブルーのOutfitsをまとい, helmetにはカモメが羽を広げた姿の金色のcrestを施したSapphire WestのCaptain Soaを正面に見据えたDonは, 目を見開き警戒した. 

“Donさん.  これは罠よ.  まともに戦えない私が, あなたと真っ向勝負するはずはないでしょ.”

朱色のOutfitsをまとい, helmetには2つの炎が燃え盛る形の金色のcrestを施したGarnet EastのCaptain Donを同じく正面に見据えたSoaは, 不気味な笑みを見せていた. 

Scene 3.12.5:

Soaは, Hanasakaに来るまでは, ある国の軍隊の一員であった.  ユーラシア大陸の東方で起きた戦争での最前線で, 彼女は, ある丘陵を守る小隊を率いる“Captain” (士官の等級の1つ) を務めていた. 

その戦争は双方とも大国の支援を受けておこなわれ2年以上の膠着状態が続き, 世界からは関心が薄れ, 前線の兵士の士気は下がる一方だった. 

そんな中, ある雨降りの真夜中に, 敵がSoaの部隊を急襲した.  まず敵のドローン10機が爆薬を積んで突っ込み, それに合わせて, 丘のふもと近くまでひそかに忍び寄っていた戦闘員50人ほどが丘の上に徐々に攻め上がってきた. 

Soaの部隊はそう簡単にやられる弱さはなかったが, 丘の上の拠点で火災が発生している状態でこのまま戦闘が継続すれば軽視できないほどの犠牲者が出る可能性があった. 

そこでSoaたちがいる位置から東に4キロ離れた町に布陣する, より大規模な味方の部隊は, ピンチに陥ったSoaたちを助けるために2つの小隊を向かわせようとしたが, Soaはそれを断った.  これは罠だと気づいたからだ. 

その町に陣取る味方の部隊は鉄壁さで有名であった.  そのため敵は, そこから戦力が分散したのを確認してから, 本命であるその手薄になった部隊を襲おうとしていると考えられたのだ.  Soaは自分の小隊の戦力が激しく削られたとしても, 敵の作戦自体を失敗させることを優先させたかった.

しかし結局, その町の部隊は救援のために戦力を分けて, その3分の1をSoaがいる丘のほうに進めさせた.  それぐらいの戦力があればSoaたちを急襲してきた敵兵たちを蹴散らしてすぐに戻ってこれると考えたからだ. 

案の定, 敵はそれを待っていた.  救援の小隊がSoaのいる丘に十分に近づいてきた時点でドローン100機による突撃を皮切りに敵の本体がその町に襲いかかった. 

戦いは悲惨なものになった.  結果的に敵の作戦は失敗に終わったが, その一帯の味方は大きな損害を受けた. 

Soaは敵兵から放たれたロケット弾が近くで爆発し, その爆風によって左腕のひじから先を失い, ヘルメット越しであったが飛び散った破片の1つが左の耳付近の頭部に当たり, その衝撃が原因で聴力が大幅に低下した. 

気絶して倒れていたSoaを助け出したのは, 救援に駆けつけた小隊の一員だったDonだった.  彼の所属する小隊はこの時点で半分以上が死傷し, 最初に丘の上までたどり着けたのは彼だった. 

Donの話しかけによって意識を取り戻したSoaは, “来るなと言ったのに…”と, 弱々しく抗議した.  Soaにとっては, これは死ぬかもしれないが負けない戦いなのは分かっていたのだ. 

それに対してDonは, “何をおっしゃっているのですか.  Captainがこの丘を守ってくださっているから我々は鉄壁なんですよ.  あなたあっての我々です.”と反論した.  つまり, Captain Soaが近くにいるからこそ, Donのいた部隊は鉄壁なのであり, Soaの存在は自分たちが生き残るうえで不可欠で, 何としてでも守らなければいけないものであった. 

Soaは, Castle Officeから特別に許可されて, 試合中も左の“Arm Enhancer”を付けていた.  しかしそれはバトルに使ってはいけないという制約を課せられていた.  通常の人間よりも強い腕力や握力を使われるのを封じるためである. 

従って彼女は, 右手だけでWeaponsを扱っており, 普通に考えるとそうした人をbattle areaに入れるメンバーに加えることは不利であった. 

しかし, Sapphire WestはそれでもSoaをCaptainに据えていた.  なぜならbattle areaにいる残りの50人が彼女の存在を必要としていたからである.  Captain SoaがFlagを守っているからこそ自分たちは安心して戦えると皆が思っていたからであり, そう思わせる不思議な威厳を彼女は持っていたのである. 

そして実際, Donは, これまでSoaだけは直接対戦しようとしなかった.  身を挺してDonたちのいた本隊を守ってくれた“Captain Soa”に対して, 偽物のbladeを持つWeaponsであっても, それを彼女に突きつけることはどうしてもできなかったのも, その一因だ. 

ただそれだけでもなかった.  やはりSapphire Westの“Captain Soa”は今でも彼にとって不死身に思える存在なのだ.  そのため, あと数メートルお互いに接近すれば, Captainどうしのduelが発生し得る状態で, なおかつ明らかにDonが勝ってしまうだろうと思えるのに, Donはためらった. 

そのためらいを計算に入れていたSoaは, 近くにいた3人のBow Fighterに合図を送り, Donにarrowを一斉に放たせた. 

Donにひるむ隙を与えないほどに惜しみなくarrowが次々と発射される中, さらにfar-sideから俊足を生かして一気にKeikoが走って攻め寄ってきた.  Keikoは, Falconの二の舞を避けるべく, Donのspearのリーチに入らないように注意しながら背後に回り, mech-horseに乗ったDonにspearを突き出し, HPを1点減らした. 

KeikoのDonへの急襲を見たGarnet側は, 左右のBPSを支援していたFASの中の4人がKeikoに向かって走り出した. 

“そいつはおとりだ!  戦力を分散させるな!”

Donは, SapphireがKeikoをおとりにして, 左右のBlockからGarnetのFighterの何人かを引き離し, Garnet側のBlock押しの力を弱める作戦であることを見抜いていた. 

4人のFighterたちがDonの指示に従って自分に近づくのをやめたのを見たKeikoは, ニヤリとしてひたすらDonの背後に回り続けて, spearを突き出し続けた.  KeikoはDonがそう考えるであろうことも想定していたのだ. 

Keikoに後ろを取られないようmech-horseの首をひたすら回転させ続けたDonは, たまらずKeikoに, “待て.”と言って, 攻撃の一時停止を求めてmech-horseから下り, Keikoと真っ向勝負に出ようとした. 

だが, 彼がそこから下りてKeikoと対峙したその時, 彼の背後からガツッとspearを突いた者がいた.  振り返ると, mech-horseの上から無表情にDonを見下ろすSoaがいた.  しかし次の瞬間, Soaは手綱を持つ左手を引いてmech-horseの首を左に向けてその場を急いで立ち去った.  Donが振り返りざまにspearを振り回して打ち払われるおそれがあるからだ. 

再びDonが自分の顔を正面に戻すと, そこにはKeikoはいかなった.  Captain Donのピンチと見たGarnetのFighterたちが集まってきたから逃げ出したのだ. 

“さすがCaptain Soa.  やはり罠だったか…  それに, Leader Keiko.  First-halfより気持ちが乗っているようだ.”

Donは見事に翻弄されたことを素直に認めた.  彼は, KeikoとSoaの一連の攻撃により4点を失っていた. 

SoaとKeikoの連係プレイによってGarnetの戦力の一部を中央へ誘い込めたのを機にBlock押しの均衡状態が崩れて, Sapphireの両sideのBPSが優勢となりGarnetの陣にBlockを徐々に押し出し, どちらもfirst-lineを越えた. 

Garnet側は劣勢を挽回しようとDonもnear-sideのBlock押しに加勢した.  彼自身, 体格も良く力が強いのでBPSにとっては非常に頼もしく, near-sideではSapphireの押し出しが止まった. 

一方, SapphireのSoaは, Garnet側によるFlag Triggered Resetを警戒して, Flag standに戻り, 守りを固めた.  また, Keikoのsquadのうち, 比較的体重が重い者はBlock押しの支援をし, Keikoを含め, 体重の軽い者とBow Fighterは, Blockを前方に10メートル進められるFlag Triggered Advanceを狙いにいった. 

しかしGarnet側も体重が軽い者をBlockから離してsecond-lineの辺りで守備を固め, Keikoたちの侵入を拒み, そのまま両者の力が拮抗したまま時間が経過し, 結局, T3は, Sapphire側が両sideでBlockをfirst-lineまで押し上げて2点を取得し, Garnet 2対Sapphire 4で終わった. 

Scene 3.12.6:

“本当に, KeikoさんがDonさんに勝つのかね…”

“勝ちますよ.  Keikoさんなら.”

Autumn Gamesの最終試合を東側のスタンドから固唾をのんで観戦していた超有名人が2人いた.  Topaz Southの“Elegant Lightning”ことEmilioと, Emerald Northの“Emerald Angel”ことChammeiであった. 

Season gamesの期間中は, 他のclubのFighterとのコミュニケーションは原則として禁じられているため, 2人はスタンド内の離れた場所にそれぞれ座っていたが, T3とR2 (Singles Match) の間のインターミッションに入って, Nexus Unitを使ってひそかに話し始めた.  もちろん周りに聞こえるぐらいの声を出して話をするわけにはいかないので, 片手で口を軽く覆ってマイクの感度を上げてささやき声で通話した. 

“相変わらず, Keikoさんびいきだねぇ.  彼女に対する気持ちの半分でもいいから, ぼくのほうに向けてほしいよ.”

“Emilioさんとは友達の関係だけです.”

機会があれば男女のお付き合いに格上げしたいと常に望んでいるEmilioに対し, Chammeiは, 駅やエスカレーターでよく流れている注意喚起のアナウンスのように機械的に互いの立ち位置を再確認させた. 

“やれやれ…  それで, 次のSingles Match, どうしてKeikoさんが勝つと思うんだい?”

“T3のKeikoさん, なんとなく力みが取れて, 本来の軽やかさが戻ったような気がします.”

Emilioは, Chammeiほど注意深くKeikoを見ていたわけではなかったので, “そうかな?”と言って, 彼女の分析をもう少し詳しく聞き出そうとした. 

“なんとなくですけど…”

Chammeiの回答はあいまいで満足できないものであったためEmilioは, “Keikoさんは, 今日は最初からいいプレイをしていると思う.  時々, 曲芸のようなこともしながら, team全体のために他人と連係しながらちゃんと仕事をしていると思う.  でも, だからと言ってDonさんに勝てるほどのすごみは感じないけどなぁ…”と, 彼の分析を披露した. 

ChammeiもEmilioの考えに異存はなかった.  しかしT3が終わってFighterたちがbattle areaの西側にあるloungeに戻りつつある時, Keikoは東側のスタンドのほうに振り向いて, 少し歯を見せて軽く手を振った.  First-halfのTeam Matchではうつむきながらとぼとぼと戻っていったのとは対照的だったことから, Chammeiは, second-halfに入って何かが吹っ切れたのではないかと考えた. 

“Emilioさん, いつも言っているでしょ.  Kassenは楽しんでやるものだと.”

“あぁ, そうだね.”

“Keikoさん, first-halfは暗い表情で楽しんでいないようでした.  でも, このT3は笑顔を時々見せていたんですよね…  戦いの場で見せる彼女の笑顔は, 最も恐ろしいです.”

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