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Part 3: The Ninth Autumn

Chapter 3.22: The Aftermath of the Raid

Overview (Spoiler-Free)

With the enemy defeated and the children safe, Kasga steps into the Palace garden to greet the Fighters and formally declare victory. As celebrations begin, two quieter stories unfold: Keiko returns to find Akio, and the two finally take a small but meaningful step toward each other. Meanwhile, behind closed doors, a sobering conversation reveals that the battle’s consequences may reach far beyond Hanasaka — and that the true danger may not yet have passed.

Detailed Summary With all enemy robots destroyed and the children's explosives safely removed by a specialist police team, Kasga declares victory to the gathered Fighters, police, and children. She then quietly redirects Keiko to go thank the person who delivered her sword. Keiko returns to Blue House and finds Akio waiting. He explains he has been relieved of his EIS role — meaning no rules now stand between them. Speechless, Keiko grabs both his arms; the two perform the micro-chip handshake ritual that will allow them to exchange Nexus Unit contact details later, then part with a promise to meet again. In City Office's shielded room, acting mayor Nora, League representative Zeronain, and Police chief Toppo receive Flora's victory report. Zeronain voices unease: Stone Cold surely anticipated its own defeat, and may have set a final trap triggered by its own destruction. Flora confirms the concern. His prediction proves correct — within days, the event known as the "Three Days of Terror" unfolds: 23 influential Rusty-believer leaders are assassinated worldwide by mech-animals, reshaping the global political order and cementing Flora's status as an untouchable power — while inadvertently beginning the process of Kasga's unwanted deification.

Scene 3.22.1:

城のPalaceの大広間の中央に突っ立ってFighterたちの様子を見つめていたKasgaは, Floraの要請を受諾したものの, すぐにはそれを実行せず, 庭に面する側の木戸のレールに沿って並べていた, 何本かのKassen clubの旗を左右に押しのけ, 大広間から縁側に出て, 目の前の白い砂利が敷き詰められた庭にいる者たちに向かって, “みんな, 大丈夫?”と, 腹の底にしっかり力を入れて, なおかつ優しくいたわるような声で, 問いかけた. 

Fighterたちが敵のロボットをすべて処分し終えるや, 城の中心を守っていたmech-animalたちは緑色の目をした平常モードに切り替わり, 彼らが格納されていた小屋に帰っていった. 

そしてその後直ちに, Floraが最後の詰めの作業を“Stone Cold”に対して実行している間に, Rose Bridgeで待機していた爆発物を処理できる特別警察官たちがRose Gateから入って子供たちのもとに駆けつけ, 爆弾の取り外し作業を実施していた. 

“Kasgaさん.”

4色の丈夫な太いひもを組み通して飾られたtorso protectorとskirt, そして銀箔のFour Heart Emblemが押されたhip protectorとshoulder protectorを付けた, 優雅で落ち着いた美しいOutfitに身を包んだKasgaの姿を見て取るや, 皆, 一気に表情を明るくして, 口々に彼女の名前を呼んで答えた. 

“Kasgaさん, 戦いは終わったのですか?”

Captain Donがその場にいる者を代表して, 現状をどう理解すればよいのか, Kasgaに尋ねた. 

“まだよ.  警察の皆さんが, 子供たちに付けられた爆弾を無事に取り外して, 安全が確認できるまではね.”

その場にいた4人の特別警察官は2人1組で, 子供たちの腹にくくり付けられていた爆発物を1人ずつ慎重に取り外していた.  その作業は, 年少者から順番におこなわれ, KasgaがDonに答えた時点では, 2人は無事に開放された状態だった. 

縁側に立っていたKasgaは, 1メートルほど下の庭に下りるために左右に取り付けられている階段を使わずに, その場から前に飛び下りて, 取り外しの作業を受けている最中の残り6人の近くにやってきた. 

優しさと美しさを兼ね備えたKasgaに接近されるだけで多くの人は脈拍数が跳ね上がり, それはそこにいた警察官も例外ではなく, ましてこうして接近されることなど彼らは皆, 初めての経験であったため, 息が苦しくなってしまった.  それに彼女は, この日はKassenのOutfitsをまとっていたため, 有事に対応する最高司令官としての威厳をも加味され, 彼らの緊張感は半端なく, この作業は一刻も早く完了させるべきだと感じた. 

その間にwatchtowerにいた3人もその庭にやってきて, Kasgaを含め皆がその作業を見守っていた. 

そして5分後, すべての子供たちから無事に爆弾を取り除くことができ, その爆弾は分厚い金属の収納箱に入れられ, 自動運転のトラックのコンテナに入れられた.  これをもって, この現場での作業はすべて完了したと判断した警察官の代表者がKasgaに対して敬礼し, “無事に作業を完了しました.”と報告した. 

“ありがとうございます.  たいへん, お疲れさまでした.”

ずっと気が張りっぱなしだったKasgaは, この日初めてあの万人の心をとろけさせる笑顔を見せた.  まともにそれをくらったその警察官は, 今にも昇天しそうな自分をなんとか地上に維持しつつ, “この戦いの終止符を打つ最後の作業を我々が実施でき, たいへん光栄です.”と元気よく述べると, 周りから拍手が沸き起こった. 

映画やドラマのエンディングのシーンでは, こうした淡々とやる地味な後処理作業はカットされそうだが, Kasgaは, そうした作業は省略できないと考えていた.  また, 今日の作戦でPolice Departmentは, 人々の目に見える形ではあまり目立った成果を上げたようには見えなかったが, これは彼らの責任において実行されたものであったため, きちんと彼らによってそれを終わらせ, その報告を受けたうえでないと, 自分が作戦の終了を発表することはできないと彼女は考えていたのだ. 

Kasgaは, Palaceの庭の周辺に続々と集まってきた多くの人たちを見渡したうえで拍手を止めると, “では私から代わりに皆さんに宣言します.”と前置きしたうえで, “皆さんの力で, 我々は勝ちました.  作戦は成功に終わり, この戦いにHanasakaは勝ったのです.  これは皆さんの勝利です.  おめでとうございます.”と, しとやかな声で力強く勝利を宣言した. 

その場にいた多くの人たちが喜びを爆発させた.  Kasgaは少し腰を落として, そばにいた小学生の男女をぎゅっと抱きしめた. 

“ごめんね.  もう安心だから.”

この時, 最初にKasgaの抱擁を受けた男の子と女の子は, 後に, Hanasakaに別の試練が訪れた時に, 今度は自分たちが彼女を守る側として命がけの働きをすることになる. 

Kasgaたちの真下にいたCastle Officeの人たちも, 喜びの声でHallを満たした.  彼らはFloraの作戦遂行を見ていただけではあったが, そのために必要な準備をした自分たちの努力が報われたといえるし, 何よりも自分たちに敵意を向けていた相手が消滅したことの安堵が大きかった. 

Castle OfficeのDirectorやスタッフは, Kasgaのように明確に殺害の対象にされていたわけではないが, 自分たちのcommunityのUnifierや城は, 彼らにとって最も大事な宝玉のようなものであり, それらが破損されることなく維持できたことで, 大きな達成感を得ることができたのだ. 

その中には, Rose Bridge前のBlue HouseでこっそりAkioとKeikoの様子をうかがっていたJuliaも戻ってきていたが, Akioはそこにいなかった. 

彼は, Keikoにswordを渡した場所に留まっていた.  彼は, Keikoに, 自分がもうEISのメンバーではないことを告げていなかったため, 先ほどの会話が, EISのメンバーとFighterは親密な関係になってはならないとするKasen規則に抵触しないか, Keikoが気になってもう一度ここに戻ってくるのではないかと考えたからだ.  おそらく彼女としては, Akioがなぜ今日に限っては“Keiちゃん”といきなり呼びかけたのか説明を求めるであろうし, また彼女自身が“Akiくん”と呼んでしまったことに何らかの釈明をしようとするだろうと考えた. 

“ちゃんと説明しておかないと, Keiちゃんに申し訳ない.”

Scene 3.22.2:

そのKeikoは, Kasgaがほかの子供たちにもひとりひとり優しい笑顔で話しかけ, この恐怖の体験によって傷ついた心を少しでも和らげようとしていたため, それを待っていた.  そしてそれが終わるといよいよFighterひとりひとりと話ができるはずだと思って, 我先にKasgaのもとに近づいた.  Keikoは, 先ほどまで強烈に放っていた死神か悪魔のようなダークなオーラをすでに完全に消し去り, 大好きなKasgaを目の前にして, 今にも泣き出しそうな顔をしていた. 

2人は, Smart Gogglesを眉の上にずらして肉眼で互いを見て, 言葉を交わす前にがっつりと抱き合った. 

“Keiちゃんが助けに来てくれて良かった.  ありがとう.  きっと来てくれると思っていた.”

KasgaはKeikoの背中を優しくなでながら, この場において最初にKeikoに伝えるべきことを端的に述べた.  Keikoは, 9月に乗馬施設でKasgaとデイトした時に, 互いの思いがすれ違っていることが分かって不本意ながら泣いてしまい, Kasgaを悲しませてしまったことが, ずっと心の中でつかえていたが, それがここで解消されて, 声を出してまた泣いてしまった. 

このまま単に泣きつかれた状態が続くと, ほかのFighterや警察官たちと言葉を交わす時間が短くなってしまうと思ったKasgaは, “Keiちゃん, もう泣かないで.  子供たちも見てるわよ.”と言ってなだめた. 

その一言によってKeikoは, 涙と鼻水でグチャグチャになった顔をKasgaの胸に当てて, 自分からは一言も発せずに, ダラダラと彼女を独り占めしているのは良くないと気づき, おもむろにKasgaの腕から離れて, “すみません.”と謝ったうえで, “ウチも, かすり傷ひとつなく勝てて, Kasgaさんを心配させずに済んで, 良かったです.”と, この場において最初にKasgaに伝えるべきことを報告した. 

“ほんまはもっと暴れまくって, 敵を叩きつぶしたかったんですが…”

元気があり余っているKeikoとしては, 目立った戦果としては, 手にしたswordを持って“Fight!”と大声を出して, ロボット1機を破壊しただけというのは, 物足りなさを感じざるを得なかった. 

“人間が命がけで戦うなんて, Floraの監視下では元々, 無理だったのよ.  今の時代, AIや機械たちじゃないとまともに戦えないわけだし, 主役は人間じゃないのよ.  それに, 彼らだって人間だって, 大事なのは, できるだけ戦わずに勝つことよ.  そのためにはちゃんと準備をすることが大事なの.  だから, Keiちゃんが次にすべきなのは, その手に持っているswordを渡してくれた人にお礼を言うことじゃないかしら?”

Kasgaは, Rose Bridgeの近くにあるBlue Houseの中で, KeikoとAkioがどのような会話をしたかまでは知らなかったが, Castle Officeとの秘匿回線によってMonicaから, そのswordを渡したのは, Keikoの意中の人であるAkioであったこと, そしてそのAkioは直前にEquipmentのinspectorを解任され, Fighterたちとの交流に制約がない普通のCastle Officeのスタッフになっていたことを, ひそかに知らされていた.

従って, Keikoを自分の妹のようにかわいがるKasgaとしては, Keikoがいつまでも思いをひそかに抱き続けるだけでそれを実現できないままでいる状態は良くないと思っていたために, 今がチャンスと, 彼女をAkioとくっつけてしまおうとたくらみ, AIと人間の主従逆転の話をしているのかと思いきや, 彼に再び会って話す方向に誘導したのである. 

Keikoは, Kasgaとの抱擁の余韻を感じながら, そのswordを渡してくれた人との会話を思い出し, そして2人が親しい関係にあると疑われるような言葉を交わしたことまで頭の中に明確によみがえり, それがKassenの規則上アウトなのかどうかはっきりさせる必要があると考えるに至った.  そしてありがたくもKasgaが, ほかのFighterたちがいる前で, もっともらしい理由を示してその機会を与えてくれたので, あの事務所に今から独りで行っても, 怪しまれない状態であった. 

“分かりました.  じゃあ, 早速行ってきます.”

Keikoは元気よく返事し, Rose Gateのほうに駆けて行った.  Keikoの後ろ姿を見つめるKasgaもうれしかった.

“お姉ちゃん, そういうことだったのね.  本当にありがとう.”

Keikoの思いを叶えるにあたって障壁となっていたものがこの迎撃作戦を実行しながら見事に取り除かれたことについて, そんなことをFloraに実行させるようなプログラムを書くのはHarunaしかないだろうとKasgaは解釈し, 自分が何を望んでいたのかを分かってくれて, こうした形で最高のプレゼントをくれた優しい姉に感謝した.

そして両手を合わせて空を見上げ, “私は, いつまでもお姉ちゃんにとって, 最高の妹でいるね.” と念じて, 天国からHanasakaを見守るHarunaに, 万人の心をとろけさせる笑顔を送った.

Scene 3.22.3:

Keikoが再びCastle OfficeのBlue Houseにやってきて, 扉の前に足を置くと今度はすぐさま自動で開き, 目の前にはAkioが律儀に立っていた.  瞬時に彼の周りを見渡すと, 彼以外には誰もいないようであり, さっきの出来事について彼と堂々と話せそうだと安心した. 

“あの…”

2人とも同時に, 相手に同じ言葉で声をかけ, 互いに照れて下を向いた.  先にKeikoが, “どうぞ.”と, 発言権を譲ったため, Akioが緊張しながら, “さ, さっき, 言い忘れたことが, あって…”と話し始めようとすると, Keikoは, やはりあの会話に問題があったのかと理解し, “すみませんでした.”と言いながら深く頭を下げて彼に謝った. 

そして, 姿勢を元に戻したうえで, smart gogglesを右手で顔から取り外し, Akioもそれに合わせてsmart glassesを外したのを確認するや, “さっき, なれなれしく, ‘Akiくん’って言うてしまって, すみませんでした.  その…, このことは, あの…, ついうっかり, 昔の癖で…  せやから, その…, わざとじゃないんで, 黙っておいてもらえませんか?”と, 彼の目を見て頼んだ. 

重大な規則違反を犯したと自覚したKeikoは, このことが表沙汰になると大きな問題になるかもしれないと考え, 可能であれば内密にしておいてほしかった.  Smart gogglesを取り外したのも, 視聴覚情報を意図せず取られてしまうとまずいと考えたからだ.  2人とも“Moto natives”であるため, 機械を介さなくても支障なく会話ができる. 

もちろん, 普通のsmart gogglesやsmart glassesであれば, すべての視聴覚情報を本人の自覚なしにシステム側に吸い上げるようなことはないが, Keikoが付けていたのは警察から今回の作戦のために支給された特別なものであったため, 警察側のシステムと回線を切ることができず, 唯一できるのは, それ自体を取り外すことだった.  ただそれも, 所定の位置に装着されていない状態が2分を超えて継続することは禁止されていた. 

“あ, いや, その…, わ, 私も, ‘Keiちゃん’って言いましたし…”

まさにそこを問いたかったKeikoは, 彼の発言を再び遮り, “そう!  そうでしたね.  あの, じゃあ, お, お互いさまってことですかね?”と言って, へらへら笑って髪の毛を右手でかき, 改めて, 水に流すことができないか提案した. 

“い, いや, それは…”

“え?  ダメなんですか?”

Akioが肯定の返答をしなかったために不安に思ったKeikoはすぐさま切り返した.  Keikoはすっかり忘れているのかもしれないが, AkioがShining Black Sapphire Boosterを彼女に手渡した時, 彼女はsmart gogglesを付けたまま会話していたため, その内容を今ここで2人でなかったことにしようと合意したところで, とっくにPolice Departmentのシステムに記録されていてもおかしくはないため, 意味はない. 

Akioとしてはそれをまず指摘しようと思ったが, 彼女が顔を近づけて迫ってきたのにたじろいだAkikoはそれを言うのを差し控えて, “あ, いや, そうじゃなくて…  その, 実は, さ, さっき, それを渡す前に, え, Equipmentのinspectorを, 解任されたんです.  だから, 今は, ふ, 普通のスタッフなんです.  だいたい, え, EISの人が, そんな本物のswordとか, わ, 渡せないですし, それに, ‘Keiちゃん’って, 呼ぶことも, ないし…  それをさっき, 言い忘れてて…, すみませんでした.”と, うつむきながら言った. 

そして恐る恐るAkiが頭を上げようとしたが, いきなり両方の上腕をガツッと彼女に握られた. 

フッと見上げると, Akioを見定めたKeikoの顔が晴々しく輝いていた. 

それは, Sapphire Cometの愛称を持つ Fighter Keikoの光ではなく, ASAKURA Keikoだった時から変わらない, 自分の道を貫こうとするKeiko Sacraの素の光であった. 

そしてそれは, 万人をとろけさせる笑顔ではないが, 一撃必殺で意中の人だけを仕留める笑顔ともいえた.  それを目にしたAkioは, 全くなすすべなく, 自分の心をspearでグサッと突き刺された感覚を覚えて, 息をのみ, ほおを赤らめた. 

Keikoは, 彼の説明に対して理解できたのかどうかだけでも返答すべきだと思いながらも, 感極まって涙があふれ出てくる一方で, のどがつかえて何らの言葉も出てこようとしなかった. 

その様子を見てAkioは, 自分のNexus Unitをパンツの後ろポケットから取り出して, 何も言わずにKeikoの前に差し出した.  それは, いつでも連絡を取り合える関係になろうという彼の意思を示すものであろうと理解したKeikoは, 自分のNexus Unitを彼のものに近づけて相互接続をさせようと, バトルスーツの腰に巻いたベルトの背中側に装着したそれを左手を回して触ったが, これは作戦遂行上, 特別に支給されたものであり, 自分のものではないことを思い出した. 

“そうか…  それ, 警察に, 返さないといけないんだね?”

Akioもそれに気づいた.  そしてちょうどその時, Keikoのsmart gogglesが, “直ちに装着してください.  10秒後に回線を回復します.”と, 音声で警告を発した. 

慌ててKeikoがそれを取り付けて, “あの…, この後すぐ, 私, みんなと警察に行かなあかんから, その…”とだけ言って黙ってしまった. 

この時代のHanasaka市民は, 相互に連絡を取り合える関係になるためには, 両人が対面し, 自分が持っているNexus Unitを相手方のそれに物理的に接近させて, Nexus Unitどうしが認識し合う状況にして, 相手方から発信された信号や情報を受け取ることを互いに了承するプロセスを履践していた.  会って話をしたこともない間柄で気軽につながったとしても, そうした人どうしでは何か意見が食い違った時にネガティヴな感情を露出するハードルが下がってしまい好ましくないと考えられていたからだ. 

ただ, 片方あるいは両方が何らかの事情でNexus Unitを持っていない時に, そうした関係を築いておきたい場合もある.  その場合は, 双方の体内に埋め込まれているmicro-chipsを使って, ちょっとした儀式をおこなう. 

まず, 互いにどちらかの手を差し出して3秒間, 握手した状態を維持する.  次に, 反対の手を差し出して同様に3秒間握手する.  そして最後に, 右手で相手の左手を, 左手で相手の右手を握って3秒間保持する.  この一連の動作によって互いのmicro-chipsに24時間限定で, 相手のNexus Unitと接続するための情報を記録しておくことができるため, それを後で双方が自分のNexus Unitに伝達して相手方に接続要求を発信し, 互いに承認すれば, 手続きは完了する. 

そのためAkioが右手をKeikoの前に差し出すと, 彼女は彼が何をしようとしているのかすぐに理解し, 素直に自分の右手を差し出した.  そしてこの時の2人はまだ互いに手のひらを密着させてギュッと握れる関係ではなかったので, 指と手のひらの一部が軽く触れ合うぐらいに握った.  そして反対側の手も同様にし, 最後に両方の手をつないだが, 恥ずかしくなって3秒経つや双方ともすぐに手を放してうつむいて照れ笑いをした. 

互いにもじもじしながら言葉を発することなく15秒が経過したところで, KeikoのAR viewにChammeiから音声通話のコールが入り, みんなで記念撮影をしたいからPalaceの前に戻ってきてほしいと要請され, Keikoはそれに元気よく応諾した. 

“じゃあ, 行くね.  ほんまにいろいろありがとう.  うれしかった.”

KeikoはAkioに簡潔に礼を述べたうえで, “もし, 良かったら…”とさらに言葉を継ぎ足した.  Akioは, 彼女が何を言おうとしているのか察して, “うん, また会おう.”とさらりと答えると, 彼女は, 完璧な満足を獲得し, 満面の笑みをぱっと開花させ, さりとて, 声は抑え気味に, “またね.”と言って小さく手を振り, 事務所を後にした. 

KeikoとAkioのこの一連の会話は, Police Departmentのシステムに記録されてはいたが, 人間には知覚できない形式に直ちに変換されて保管されていたため, 本人たち以外ではFloraだけが知ることのできる秘密として取り扱われた. 

この時代の人たちは, ほかの人間に自分のプライベートなことを知られるのは抵抗を覚えるものの, 情報システム群に知られたとて, さほど気にしなかった.  なぜなら機械には欲望がないからだ.  そしてその無欲の機械が人間たちを支配していたからだ. 

Scene 3.22.4:

そうした他人には知られたくない個人的な会話の内容のみならず, Floraは, 今回の作戦遂行にあたって自らがやったことの詳細を人間には教えなかった.  それは, 教えたくないから教えていないのではなく, 人間の知能では理解できないため教えようがなかったのだ. 

人間たちもその追いつきようのないレベル差を理解していたが, こうして戦いが終わった後, やはり振り返って自分が見聞きし体験したことを整理したい気持ちは当然ながら抱いた. 

City Office内の電磁シールドルームの中でこの戦いを見守っていた市長代行のNoraもそうだった. 

彼女は, Police DepartmentのToppoと, “League Office”から派遣されたZeronainとともに, Floraから戦勝の報告を受け, そしてHanasaka Cityの統治と防衛のために付与された権限を返還する旨を伝えられると, “今日は, あなたのおかげでHanasaka側に死傷者が出ずに勝てました.  本当にありがとうございました.”と, 3人を代表してFloraに謝意を表明した. 

ただNoraは, そのAR viewで, 澄んだ青空の下, 地平線のかなたまで草原が広がっているのが見えていたにもかかわらず, すっきりとしたさわやかな気分に浸れていなかった.  できすぎた勝利であったがゆえに, 心の底から喜べない気持ちをどうしても隠すことができず, “それなのにこんなことを質問して申し訳ないのですが, これはすべてあなたが用意したシナリオどおりなんでしょうか?”と, 自分の仮説を問うた. 

“シナリオを用意したのは事実ですが, そのとおりに進んだわけでもありませんでした.  ただその差異は, 許容される範囲内に留まりました.”

Noraたちが座って向かい合っているテーブルの上に浮いている, ぼんやり白く光る球体の姿をしたFloraは, 自分が脚本家であったことをあっさりと認めた. 

そして彼女は, “自作自演の出来事だと聞かされると不愉快に思われるかもしれませんので, ほかの人たちには語らないでいただきたいのですが…“と前置きをして, その場にいる3人の心理, すなわち人間は結局, super-intelligenceの手のひらで踊らされているだけの存在ではないかという不安と不快感を読んで, その必要性を, 次のように語った.

“人間の皆さんと一緒にコミュニティーを維持し発展させるためにはストーリーの共有が必要です.  特に, 私たちのコミュニティーに重大な脅威が迫ってきて, これに対処しなければならない時はそうです.  今の時代, 脅威には基本的に私たち機械が対処しますが, まさに機械的に淡々と処理してしまいますと, 人間の皆さんは言語化されたストーリーを持つことができません.  そうすると, 人間はその脅威から学習することができません.  人間の皆さんが学習しないとコミュニティティーの力は弱まります.  私たち機械だけが学習してもダメなのです.  そのため私たち機械に, ある程度のストーリー作りは許容いただきたいのです.”  

これに対してZeronainは, “ご心配無用です.  あなたの考えは私たちも理解していますし, 異論はありません.”と, Floraに疑念を挟むようなことはしないことを伝えた.
そのうえで, “今日の戦いは, Kassen communityのUnifierであるKasgaさんを主演者にして, Kassen Fighterたちの活劇を交えた, おもしろいストーリーだったと思います.  そして, 子供たちの命を救ったうえに, 機械の犬と堂々と舌戦をやったKasgaさんは, 多くの人からますます尊敬を集め, Kassen communityのUnifierから, 事実上, Hanasaka CityのUnifierになるでしょう.  ただ, 私が少し心配なのは, それが行きすぎて, 熱烈に彼女を支持する者が彼女を神格化していく可能性もあるのではないかという点です.”と, 今回のストーリーのその先を予想した. 

“確かに, もはや彼女を超える存在はこのHanasakaにはいないでしょうね.”

Zeronainの考えにNoraも異存はなかった.  そもそもKasgaがKassen communityのUnifierに留まっていないことは誰の目にも明らかだったが, 今日の彼女の活躍によって, その事実上の地位は不動のものになったと言えた. 

さらに, “万人の心をとろけさせる笑顔”と“万人の心を動かす弁舌”を持つKasgaが得体のしれない超人的な能力を持っているはずだと思い込んでいる者たちにとっては, 実際にこの11月9日に彼女が自分たちを救ってくれたことを確認できたことで, 何か神聖な意味を認識するに至るだろうと考えられた. 

Floraも同じ認識を持っていた.  人間に予想できるようなことは, Floraには当然予測できたからだ.  そのため, “ご懸念は, 私も理解しているつもりです.  今後, 注意深く対処していきます.”と約束した.  しかしそれがどれほど厄介そうであるかまでは語らなかった. 

“ありがとうございます.  人間がどれほど面倒くさい生き物であるかは, あなたが一番よく分かっていると思いますので, どうか, 十分な対応をお願いします.”

Zeronainは, 手を合わせて, 祈りに近い態度でFloraに要望した. 

そのうえで彼は, “それから, もう1つだけ申し上げると, 私は, どうも, この戦いはまだ終わっていないような気がします.”と, さらにネガティヴな言葉を付け足した. 

Zeronainが誰に対して話しかけているのかはっきりしなかったため, 数秒間, 誰も言葉を発しなかったが, Toppoが, “どういうことですか?  Floraが戦いは終わったと言っているのに, 何を根拠にそうおっしゃるのですか?”と, 戦闘実行者であるFloraの前でそんなことを言える心情を理解できず, 反応した. 

“明確な根拠はないのですが, 私はそもそも, Sapinesが勝てるはずもないFloraを相手に戦いを挑んできたことにずっと違和感を持っていました.  Stone Coldは, あの6機のロボットが機能を完全に停止したことを条件に‘Stone Souls’を通じて大掛かりな悪事を働こうとしましたが, それもFloraが阻止しました.  しかし, すべての石の行きつく先のStone Cold自身をFloraが破壊する可能性を, 彼が考えなかったとは思えないのです. 

“つまりStone Coldは, Floraとの戦いで殺されるかもしれない前提で戦いを仕掛けて, そしてやはり殺された.  ということは, それを発動条件にした何かを, まだ隠し持っているのではないかという気がしてならないのです.”

“本当に恐ろしいことは, これから起きるとおっしゃりたいのですか?”

驚いたToppoの問い返しに, Zeronainは, “はい.  おそらく.”と短く答えた.  Noraは, Zeronainの不気味な予言を信じたくなかったため, Floraに対して, “あなたはどう思いますか?”と尋ねた. 

“その可能性はあると思います.  それに, 私たちがStone Coldを殺してしまったことで, これ以上の追跡は困難になりました.  従って, それがいつ, どのように発動されるのか, 現時点では不明です.”

Scene 3.22.5:

Zeronainの予言は正しかった.  後に, “魔の3日間”と呼ばれるようになった, 各国要人の連続暗殺事件が起きたのだ. 

Hanasakaを含むExperimental Citiesが戦勝の余韻に浸っていた11月11日, Experimental Citiesの1つである“Nadiapolis”に攻め込もうとたくらんでいた隣国の大統領が最初に殺された. 

もちろん, 実行犯は人間ではない.  殺人用mech-beeとmech-roach, 合計200機に襲われた.  他国の元首を迎えて夕食を共にしている時に, 会場に潜んでいた虫たちが, アルコールが入ってほろ酔い加減になってきた大統領を目がけて飛びかかり, 次々と自爆しまた劇薬を付着させ, 直視できないほどの無残な姿に変えた. 

このmech-beeとmech-roachとが共同で殺害を実行する場合, たいていは, まずmech-roachたちがターゲットの足元に忍び寄り, 両足首に這い上がって自爆し, 歩行が著しく困難な状態にする.  そして間髪入れずに, mech-beeたちがその者の背後から首を目がけて体当たりして自爆する.  これによって多くは脊髄の上部に重大な損傷が生じてほとんど動けない状態に陥り, あとは虫たちが頭部に対してさらに攻撃を繰り返し, 口や鼻の穴から体内に侵入しとどめを刺す. 

ただ, 周りに控える護衛の者が身を挺して対象者を守ることもあるので, 想定どおりに殺せるとは限らない.  しかし, 虫たちの戦術も進化しており, 護衛しようとする者に対しては, 過度に興奮させ錯乱状態に陥らせるnano-machinesを注入するタイプも出てきていた. 

そうしたnano-machinesが体内に入った場合, 今度はその者たちがそのターゲットや周りの者たちを襲う.  そうなると混乱はますますひどくなり被害者も増えるため, 護衛の者は自分の職業上の役割を自覚しながらも, 対象者を助けるのをためらい, ただ茫然とその者がやられる様を見て, 虫たちが去っていくのを待つだけの場合もあった. (こうした特定の人を殺害する虫たちは, その周辺にいる対象者以外の者には, 抵抗してこない限り, 手を出さない.  エネルギーの無駄だからだ.) 

そのRusty-believerの大統領を殺した虫たちは, 同じ会場にいた, 同じ思想をまき散らしていた宗教指導者もついでに昇天させた.  虫たちは, 聖人と俗人を識別する機能を持っていないので, どれだけ功徳を積んだ者であっても, 容赦はしない. 

一方, その大統領に迎えられた側の国の元首は, Rusty-believerである当該大統領にあこがれを持った者ではあったが, 小国の代表者にすぎず, また無能で, 強い信念を持っているわけでもなく, 周りへの影響力が小さいと思われていたため, 殺されずに済んだ. 

つまり, 人類は, 強大な権限や広範な影響力を持っている者であればあるほど, 人間の指示など一切受け付けないAIによって暗殺計画を生成され, 機械たちによって, あるいは機械に操られた人間によって狙われ, 長生きすることができないという, 恐ろしい時代に突入したのである. 

その新しい時代の幕開けを見事に人間たちに分かりやすく知らしめたのが, この“魔の3日間”であった.  正確には2日半の間に, 合計23人がmech-animalsやnano-machinesによって殺害された. 

しかも, 殺されたのは, Experimental Citiesにとって目障りな者ばかりだった.  そのため, Flora sistersとExperimental Citiesに刃向かおうとしていた勢力は大きく力を落とし, もはやまともに張り合うことなど困難になった. 

しかし, そうであるがゆえに, Stone Coldとの戦いも, その後の“魔の3日間”も, すべてFlora sistersによる自作自演ではないかという疑いを持つ者は少なくなかった.  23人の邪魔者が消えたことによって最も得をしたのは彼女たちだからだ. 

この疑惑に対してFloraは, 23人を殺したのは自分たちではないと明確に否定した.  彼女たちは, 自分たちにとって好都合な結果をもたらすことであっても, あのようなド派手な惨殺をおこなって, 全人類に恐怖と不快を覚えさせるようなことができるようには作られていないと説明した.  人間たちを慈しみ, 庇護するAIにとってはそうしたことを自分たちがやることなど論理的に不可能であり, むしろ, 過激な“Machino-supremacy”に立つ犯罪生成AIのStone Coldこそ考えそうなことではないかと, 人間たちに問うた. 

つまりFloraは, 自分たちもStone Coldに利用されたと認めた. 

Stone Coldは, Rusty-believersの過激派がHanasakaを攻撃しようとたくらんでいたのを利用して, 彼らにHanasaka Castleの破壊とKasgaの殺害をそそのかしながらも, 他方でそれを実行しようとしていた者たちを葬っていった. 

そして最後は彼らに代わって自ら実行しようとしつつも, それが失敗に終わることを最初から想定し, ひそかにStone Soulsを使った世界同時多発の犯罪行為を実行しようとしていた. しかし, それもどうやらおとりだった.  Floraとしては, それは罠かもしれないと疑ってはいたものの, それが実行されるのを無視するわけにもいかず, それを防ぐためには暴走モードになってStone Coldを焼き切るしかなかったのだ. 

そしてSapinesは, 予定どおり, Stone Coldの死を発動条件として, 彼が本当にやりたかった, “Humano-supremacy”に立つ, 影響力の大きいリーダーたち23人の殺害を実行したのであった. 

Floraとそれに同調する多くの人たちは, そう考えるのが自然であろうという結論に至ったが, 他方で, Floraがそう説明できるように, わざわざHanasakaを舞台にしたRusty-believersもしくはStone Coldとの戦いというストーリーをでっち上げ, そのうえで23人を片付けたのだと主張する者もいた.  ただ, いずれにしてもAIがやったことであり, 人間には真実を見つけることなど到底できるわけはなかった. 

様々な議論や憶測がなされた“魔の3日間”は, 誰もが納得する因果関係が解明されないまま, 人類の歴史を, いい意味でも悪い意味でも, 大きく変えた. 

地球上の多くの人たちは, 自分たちの統治者がいつまでも人間なんかのままだと, いつでもどこでも殺されかねず, 安心して生活できないかもしれないという不安を持つようになり, 最低限, 自分たちを守るのはAIであるべきだし, できればFlora sisters と同等か, もしくはそれ以下であっても彼女らから敵とみなされないものであるべきだと望むようになった. 

つい先日まで多くの人に支持されていた, Rusty-believersの思想やHumano-supremacyは, 瞬く間に苔の生えた墓石のような扱いとなった. 

Flora sistersは, 間違っても刃向かうべき存在ではなく, すべてのAIの頂点に立つ, 世界最強のsuper-intelligenceとして多くの人から尊敬される対象になるに伴い, 今まで, Experimental Citiesの市民に対して, 働かずに餌だけ食べている実験用の家畜だとさげすみ, 時には暴力や恐喝をしていた者たちが逆に彼らにあこがれを感じ始め, 彼らの生活を見本とすべきだと考えるようになった. 

そして, そうした者たちは, 代表者と称する人間たちに自分たちが支配されていることにようやく疑問を持つようになり, 昔ながらの政治スタイルを引きずっていた国々は, 自らの統治機構を抜本的に変更するか, さもなければ滅亡の道を走り出した. 

Hanasaka Cityに目を向けると, “魔の3日間”は, 市民たちにも大きな不安を与えたが, 殺された者たちが全員, 影響力のあるRusty-believersであったことから, 自分たちに危害が及ぶ心配はないと分かり安心した.  むしろ, 敵対勢力の減退を喜んだ. 

彼らの殺され方は悲惨であったが, 自業自得だと思えた.  Experimental Citiesの市民の中には, そうした者たちが支配する社会で迫害を受け,または 生きづらさを感じる生活を強いられ, それが嫌で逃れてきた人たちが少なからずいたからだ. 

そして, Experimental Citiesの市民だからというだけで, 不当な扱いや嫌がらせを受けることがなくなり, この星で生き残ることができるのは自分たちのほうだと自信を持つようになった.  中には, 自分たちのほうが優秀であり, 選ばれた者たちであると優越感を持ち, 逆に市外の者たちをさげすむ者まで現れるようになった. 

そしてこの後のHanasakaの歴史は, やはりKasgaを抜きに語ることはできなくなった. 

Zeronainが言及した, Kasgaが“Hanasaka CityのUnifier”と変化していく現象は, もはやどうにも止めようがなかった.  つまりそれは, Pro-Mayor Factionの人たちが恐れていた, 市長という存在の無意味化であった. 

実際, Hanasaka Cityは, 3代目市長が亡くなった後, 次の市長を選ばないまましばらく放置していたが, この年の12月1日をもって, 行政上の最終判断はすべてFloraがおこない, 人間の“市長”という存在には一切権限を持たさないことにし, 市長は, 毎月, 市民からくじ引きで5人選ばれ, 50日間の任期において, 形式的または儀礼的な仕事をいくつかこなす者と再定義し, その1か月後の10 E.E.の1月からその新しい市長制度を施行した. 

もっともそれは多くの市民にとっては最初から意図していたわけではなかった.  11月9日の戦いの後, 早速, 市民たちは, 空席のままになっている市長にKasgaがなってほしいと願って選挙の実施を求めようとしたが, 肝心のKasgaが自分は市長にならないと明確に拒否した.  彼女は, これ以上, 自分のせいで政治的な対立を生じさせたくなかったからだ. 

そこで市民たちは, 市長を形式的な存在にしたうえで, Kasgaに市長になってほしいと願ったが, これも受け入れられなかった.  どういう存在であれ, 彼女は, 市長に興味はなかったし, 歌手としての活動と, “Kassen communityのUnifier”の役割を演じること以上のことは一切断り, できるだけ平穏に暮らしたかったのだ. 

そのため市民たちは, いつかKasgaがくじ引きで市長に選ばれるのを夢見ることができる制度にしたのであった. 

とはいえ, 彼女がHanasaka Cityの事実上の代表者であることは, 市外の人間たちのほうが強く認識した.  本人はそう思われることを嫌がったが, 未来に語り継がれるストーリーを持つに至った者に, 人間はあこがれる.  Hanasaka Cityに来訪した市外の要人にとっては, くじ引きで選ばれた市長よりも, 真にリーダーとしての資質を持ち, Stone Coldと堂々と戦った伝説を作ったKasgaと会って話ができることのほうがはるかに名誉なことであった. 

従って, Kasgaがそうした要人と面談することは, Hanasaka Cityの外交に資するといえたが, 当の本人は, 自分がHanasaka Cityの外交の機能を持つことになってしまうのを警戒し, 今後は, Kassenに関するイベント以外で表に出ることを極力控え, やむを得ない事態が生じた場合を除き, 外交や政治に関わることはしないという意思をはっきり示した. 

そのためCastle Officeは新しい市長制度に移行するにあたり, その来訪者が, Kassenのファンであることを前提に, communityに多額の資金をつぎ込んでくれたり, Kassenにとって何らかの良い影響を広範に与えてくれたりした者であれば, 多大な貢献をしたファンへの感謝として, KasgaがKassen communityのUnifierとして会うことは可能であるが, それ以外には会わない旨を明らかにし, 彼女の心理的負担の軽減に努めた. 

それでも彼女の存在は十分であった.  最も優秀で最も強いsuper-intelligenceと, 誰もがあこがれる聡明な人間がいれば, 他国は敬意を払い, 小国であっても一目置かれる存在でいられることを実証したのであった. 

ただ, その尋常でない存在感によって, Hanasakaは今後, Zeronainが懸念を示した“Kasgaの神格化問題”につきまとわれることになるのであった. 

この戦いの後ほどなくして, Hanasaka Cityの内外で, Kasgaを神の権化と崇め, 自分はKasgaの信徒であると自称する者たちが現れ, やがていくつかの集団が形成されるようになった.  それは新たな宗教の誕生であり, また新たな宗教対立の始まりであった. 

その最大の被害者は, Kasga本人だといえた.  彼女は自分を1人の歌手にすぎないと捉えていたが, 勝手に人々が作り上げた神の幻影に振り回されるようになる.  彼女は, 自分は神のように尊敬されるような存在ではないし, 信徒は持たないし, そういうことをされると困ると何度も明言したが, それでも人々はやめようとしなかった. 

どのような勝利も良いことばかりではなく, 負の副作用が生じるのは必然といえた.  そして, この厄介な副作用は, Kasgaが生きている間はそれほどひどく発症しなかったが, 彼女の死後, すなわち神格化された存在の肉体が消滅した後, 徐々に暴れ出し, Hanasakaに深刻なダメージを及ぼすようになる.  そのことについては後述する. 

さて, このPart 3を終えて, 次の話に進む前に, 歴史上の講釈から一気に個人的な恋愛話になるが, AkioとKeikoがようやく心の清算をするシーンを最後に見ておく.


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